心の病気
2014/09/09雑草プロの新人が、出勤途中に殴られた。
殴られたのは20代前半の青年、鳩山(仮名)だ。それは出勤途中のバスの中で災難に合った。
鳩山の話によると、いつものようにバスに乗っていたら、近くにいたスーツを着た40代の男が何やらブツブツ…
自分に話しかけてるのかなぁと思ったらしいが、見るとそうでもない。
変だなぁと思いながらも、そのまま無視してると、次の停留所で突然胸ぐらを掴まれたそうだ。
興奮した男は、何やらわめきながら鳩山をバスから引きずり出した。
そして体をバンバン殴られたそうだ。
バスの乗客は誰も助けに来ないどころか、運転手に早くバスを発車させるようにセカせたそうだ。そしてバスはそのまま急発進。
鳩山はこれ以上殴られたくないから、男の両手を持って抵抗したらしいが、しばらくすると男は走って逃げて行ったとのこと。
その後、鳩山は警察に被害届けを出したが、受理はされなかった。
犯人はすぐに判明したのだが、犯人はその界隈では有名な障害者だったらしい。
鳩山「シャツはビリビリになるし、殴られ損なだけでした。」と、鳩山はそう嘆いた。
病人じゃあ我慢するしかないが、ここににも変わった人間が入って来る。
以前、会社近くの居酒屋のママさんに言われた事がある。
ママさん「オタクの会社に気味悪い人が居るのよぉ…」
話を要約すると、ある晩ママさんが店を閉めた深夜。一人で徒歩で家路に向かった。
すると後ろからヒタヒタと足音が聞こえてくる。
ママさんは早く追い抜いてもらおうと、歩くスピードを緩めた。
すると後ろの足音もそれに合わせて緩める。
気味が悪いから、今度は普通に歩いてみた。すると後ろの足音も同じように合わせて付いて来る。
再び歩くスピードを緩めると、後ろの足音も緩める。あきらかに後ろから付いて来る足音は、ママさんに歩調を合わせて付いて来る。そして決して追い抜こうとはしない。
それの繰り返しで、ママさんは怖くて振り向くことも出来ず、走って逃げたそうだ。
やっとの思いで家に逃げ込み、門の陰から覗くと、その人間は、雑草プロの顔見知りの男だったと言うのだ。
その話を聞いて、俺は思い当たる事があった。それは今は辞めてしまったが、小坂(仮名)という男だ。
この男、とにかく病的なほど、人と関わる事が嫌いなのだ。
街中で遠くから自転車に乗った小坂がこっちに向かって走って来る。そして遠くで俺に気が付くと、小坂は慌ててUターンして俺との遭遇を絶対に避けるのだ。そんな事が何度もあった。
おそらくママさんに対しても、近付くと顔見知りだから、挨拶をしなければならない。それを避ける為に距離感を保って歩いたのだろう。
そういった人間は、他のスタジオには何人も居る。
中にはこっちが挨拶しても、堂々と無視してすれ違って行く馬鹿女も居る。
そんな時は追いかけて行って、説教する。たとえ馬鹿でも自分だけ不愉快な気持ちになるのは嫌だからだ。
そんな変わり者のアニメーターは、極端に人を嫌い、そもそも人との交流そのものが嫌なのだ。
そしてこの雑草プロには障害を持った人間も入って来る。
会社の方は、障害を持っている人間は、こと絵に関して、稀にとてつもない才能を発揮するという事を期待してとのことらしい。
それはそれで結構だが、鳩山がこの会社に面接に来た時、その障害を持つT君に凄まれて絡まれたらしい。T君はよほど機嫌が悪かったのか、鳩山が絡まれ易い雰囲気なのか、運が悪い男だ。
T君のようにハッキリ病気だとわかっていれば、さほど問題はないが、もっと大変なのが「統合失調症」の人間だ。
断っておくが、俺はこの病気を決して差別しているわけじゃない。現に俺の親族もこの病気にかかった事がある。だからその大変さは充分わかっている。
この病気は重症になると、周りが大変なのだ。他人の事が全く信じる事が出来ず、自分の言う事だけが正しいと信じてる。
時には幻覚を見たり「神の御告げ」まで聞こえる。
そして、ある日突然人格まで変わってしまうのだ。
俺はアニメ界で、そんな人間を何人も見てきた。そして様々な面で翻弄されてきた。
責任感が強く、自分を追い込んで、頑張り続けてしまう人間にこの病気は多い。
その病気を自覚しないまま、自分は普通だと思ってるからやっかいだ。早く自分で自覚して治療しないと周りも大変なのだ。
だから俺はいつも新しく入ってきた新人達には「溜めるな」と言い続けている。
何か問題があって、苦しみ続けて病気になるぐらいなら、喧嘩しても吐き出せと。
この病気はアニメーターも陥り易い。
自分の技量に悩み、締め切りに追われ、食う事にも追われ、そのうえ人間関係まで追われたら、居場所まで無くなってしまう。
俺の取り越し苦労かもしれないが、事実、俺はアニメ界で、そんな人間を何人も見てきた。そして現在もそういった人間と関わりがある。
最近また「心を支配された人間」が動き出した。
頭で理解してても、時々投げ出したくなる。
そんな思いで残業していた日曜日の早朝、会社の電話が鳴った。
「明日アップでニ原の仕事をお願いしたいのですが…」
ここはそんな仕事ばかり…
それでも仕事だけに集中できたらどんなに楽だろう…
マイナスの刺激をプラスに変えて頑張るしかない。
みんな病気にはなるなよお~!