アニメーターの連休




正月を故郷で迎える為に雑草達が各自帰省して行った。

アニメーターにとって、一年間で正月が一番ゆっくり休める行事だ。

基本的にアニメーターに休みは無い。
仕事のアップ日が迫れば、日曜も仕事しなければならないし、お盆休みはどころか、年間の祝祭日すら休めない。

会社によっても違うだろうが、特に下請け会社はそれが当たり前。
まして多くのアニメーターは出来高払いだから、休めば休むほど生活が苦しくなる。

雑草達の帰省の仕方も様々だ。仕送りがあって余裕のある人間は新幹線を使う。

しかし、ここの貧乏アニメーター達は、料金が安い高速バスや何度も鈍行を乗り継いで帰って行く。

ここに在籍する土条(仮名)という女の子は、昨年は東京駅から島根県まで鈍行を何度も乗り継いで実家まで帰って行った。

お金を節約する為に普通料金だけの支出でのチャレンジだった。
10回以上の乗り継ぎの為、途中駅で一本の列車に乗り遅れたら、全てがオジャンのギャンブルだった。
案の定、途中の静岡で事故があったらしく、ダイヤが大幅に乱れて、岡山へ到着した頃には最終列車が終わっていた。


その岡山といえば、大友克洋作品「アキラ」のプロデューサーだった横溝氏が岡山でマヌケな事をやっている。
岡山で友人達と徹夜で麻雀をして、始発の伯備線で近くの倉敷駅で降りる予定が、眠り込んでしまい、終点の出雲まで行ってしまったらしい(本人談)

帰りは再び鈍行に四時間揺られて戻ったそうだ。

その彼は中学時代は陸上のアスリートだったらしく、走り幅跳びの選手だった。
本人が言う「中学時代に、ある大会で凄い記録を出したんです、全日本のジュニア新記録を抜いたんです! ところが前日が誕生日だったんで、一日違いで記録が認められなかったんです…」俺の住みかに遊びに来た時に残念そうにそんな話をしてくれた。

彼は作家の横溝正史の遠縁で、今でもアニメに関わっているのだろうけど、懐かしい思い出だ。


話がズレたが、岡山に足止めをくった土条は、家族に連絡をとって迎えに来てもらったそうだ。

今年は土条から無事に着いたとメールが届いたが、年に一度の貴重な連休をゆっくり休んできて欲しい。