アニメッシュ





アニメの仕事をしているのにアニメを全く見ない。そんなアニメーターがいるのだ。

この雑草プロにもいる。それは何故か?…

それはつまりテレビが無いのだ。

特に地方から出てきて、仕送りも貰えないアニメーターはテレビが無い。
あっても受信料を払うのがキツくて払えない。
だからテレビは置物と化して、自分が描いた作品さえ見てないのだ。

驚く事にこの会社にはテレビが無い。アニメ会社なのに会社ではアニメはおろかニュースさえ見れない。

だから雑草達は、世の中の事が全くわからない。

自宅通勤組みは家に帰ってチェックしてるみたいだが、アパートを借りて仕送りも無い人間はテレビも見れないでいる。

貧乏で外食も出来ないから、店のテレビを垣間見ることすらない。

また新聞を取る余裕もないから、驚くほど社会情勢には疎い。

不便な事はまだある。仕事で使う鉛筆や文具類も会社からは支給されないから、自費で購入している。

一枚100円の動画を描くのに鉛筆一本買ったら、儲けなどない。
当然交通費も支給されな。そんな訳でアパート組は、やりくりが大変だ。

ほとんどが会社とアパートの往復だから、情報はたまの休みに友達から知ることになる。
散髪も自分で切るから、時々ヘンテコリンな頭で出勤してくる奴もいる。
服装などもオタク風のアニメータールック。
女の子はファッションなどには全く興味ないようで、スカートを履いた女の子はあまり見かけない。

まるでどこかの工務店のオヤジが着るような服を着て、仕事をしている女の子もいる。

学生時代からアニメが好きだから、帰宅部も多く、孤独が好きだから、人間関係も苦手になる。

そしてアニメ界で待ち受けてるのは、貧乏がゆえの一般社会とは隔離した生活。
そして益々人間関係が苦手な人間になって、社会性まで欠けていく。

まさに文明社会を拒絶して、集団で生活を営む「アーミッシュ」のような生活。

アーミッシュならぬ「アニメッシュ」になっていくのだ。

そんなアニメッシュは、アーミッシュのような宗教観は持ち合わせてはいない。

貧乏と向かい合い、お金のありがたみ、物の価値観を敏感に感じている人種なのだ。

物の溢れた今の時代にこんな若者達もいる。

どうだろ? 物の大切さを学ぶために、君もアニメッシュになってみないかい?