怪獣墓場

                                                                                                           2015/11/30





会社に行く途中で古本屋に寄った。
すると「ウルトラマンガイア」の映画のパンフレットが目に止まった。
ウルトラマンガイアの主題歌は、南のお父さんが作った歌詞だ。話の種にそれを買って南に渡した。

その夜、南はそのパンフを夫に見せた。南の夫は小さい頃、この世代で育った。
ところが今度は南の夫が驚いた。夫は義父がウルトラマンガイアの主題歌の作者だとは知らなかった。

それよりも驚いたのは、ウルトラマンガイアに出演していた少年が、南の夫の知り合いだった。
意外な事はまだ続く。その少年の役柄の名前が「つとむ」だったとのこと。(ナント、俺と同じだ!)
そんな訳で、その夜は意外な接点で話が盛り上がったらしい。

南の夫にしてみれば、子供時代に見ていた特撮の主題歌を作ったのが妻の父親。それに出演していた少年が知り合いで、少年の役柄の名前が、妻の上司と同じ。三者三様のなんとも不思議な出来事だった。

もうひとつ意外だったのは、ウルトラマンガイアの作詞は南のお父さんだと知ってたが、作曲がナント!!歌手の「松原みき」だった。(若者にはわからないだろうが…)
俺は松原みきの歌がお気に入りで、会社で時々かけていた。「真夜中のドア」、「ニートな午後3時」、「愛はエネルギー」、「アイツのブラウンシューズ」などなど。歌唱力のある歌手だったが、残念ながら若くして亡くなってしまった。
でも何故歌手の松原みきが? …

ひょっとして同姓同名の人かなと思って、南に頼んでお父さんに確認してもらったら、やはり同一人物とのこと。突然歌手を辞めて、作曲家に転身したらしい。
でも松原みきとウルトラマンは違和感がある。

松原みきは青春時代、同棲していた彼女と一緒に聞いた思い出もある…

そんな一冊のパンフレットでいろんな思いが駆け巡った。

そういう俺も昔はウルトラマン世代の少年。小学生の頃はリアルタイムでウルトラQから見ていた。
俺の時代のウルトラマン世代の人間は、ウルトラマンとウルトラセブンしかウルトラシリーズだと認めない人間が多い。
やはり誰しも子供時代に見ていたものが、一番思い入れが深い。

ウルトラマンシリーズで、俺がわかるのは、「ザ・ウルトラマン」までしかわからない。昔サンライズでアニメ版の「ウルトラマン」を作っていて、知り合いがそれを作画していた。だが感想は避けとこう。
あとのシリーズはチンプンカンプンで、写真を見ても名前も出て来ない。ウルトラシリーズは個人的には「父」や「母」が登場するようになってからシラケてしまった。

仮名ライダーシリーズも「スーパー1」までしかわからない。その後のシリーズの電車に乗ったり、「ドライブ」などとなると、もはや「ライダー」とは関係がなくなる…

南の父が作詞したRXの歌はカッコ良かった。♪光のオーラ身にまとい…♪

その南のお父さんに丸美屋の「のりたま」のエイトマンシールと、「風のフジ丸」のソノシートをあげたら喜んでいたらしい。
「当時の思いがブワ~ッと蘇ってきたよ。」と言ってたとのこと。
みんな子供時代にハマった番組は、大人になっても忘れない。

大人になってから、ひとつだけハマったのがあった。それは「宇宙刑事ギャバン」。ギャバンはカッコ良かった。
昔、荻窪のルミネ前の広場に実物大の「ギャビオン」が置いてあった時にはビックリした。

今は心が汚れたのか、純粋にアニメも特撮も楽しめない…
もはやアニメは「仕事」として割り切ってる。マスコミが言う「夢を与える」とか「芸術」だとは、これっぽっちも思ってない。
毎日置かれた現状と戦いながら、自転車操業で凌いでいる。

俺はボーダーラインギリギリの職業アニメーター。俺以下だったら職業じゃなくなる。そうならないように雑草達にハッパをかけているが、最近の若者は言葉少なで、よくわからない。「仕事のできる」奴ほど良くわかる。
雑草プロは決してメジャーじゃないアニメプロ。メジャーじゃないから、ハンパ者の馬鹿ドラマが盛りだくさん。

今日も一人日曜出勤。ウルトラマンに例えたら、ここは「怪獣墓場」
違ってるのは「シーボーズ」のような可愛らしい怪獣はいない…