どうなるアニメ界



 やりたい企画はあるけど、俺は全くの無名だし、下請けの会社の援護があってもなかなか決まらない。子供向けに古典芸能のアニメをやりたくて企画したものの、「こういうのは文化庁にでも持って行ってください」とのこと。
 実は俺の兄貴も少しは有名で、東京都の無形文化財。丸一仙翁という、江戸大神楽の十三代目家元なのだ。兄は数奇な人生を辿り、今まで芸名を含めて六回も名前が変わっている。過酷な人生を歩み、今日を成した人生を参考に、現代のデジタルだけでなくアナログ的な良さも再発見したいという意図で企画した。
 俺の周囲からは、「身の程知らず」だとか「道楽でやってる」とかバカ扱いする人間もいるが、バカで結構。今の俺には捨てるプライドさえない。
 それをある脚本家に見せた。すると、いちいち否定する意見ばかり言う。相手は口八丁手八丁で理論的だ。話を聞いてて、なるほどな、俺とは逆の考え方もあっていいのかなあと重い、思わず「そうですねえ・・・」と言ってしまった。
 するとその脚本家、
「今、そうですねって言いましたね!」
 突然俺を指さして、再び、
「柳田さん、今そうですねって言ったでしょう! それじゃ駄目なんですよ! 相手が反対の事言ったら相手の理論をねじ曲げても、自分の意見を貫き通さないと企画なんて通りませんよ!」
 と説教。
 なるほどな、と思いながらも、そこまで図々しくなれない俺は駄目なのか、とも感じた。
 またあるアニメプロデューサーは、
「柳田さん、この世界は半分ハッタリの世界だから、ハッタリかました方が勝ちですよ」
 などとも言う。
 現にそうかもしれない。俺はそういった人間を何人も見てきた。屁理屈と騙しのテクニックでビッグになった奴もいる。アニメ界の一部の人間は、そういう人間もいる。
 長年この仕事を続けていると、嫌な面も数多く見てきた。大手のアニメ会社の制作の人間が、フリーの原画マンに仕事を断られて、殴った事件や、恐喝事件など、闇に葬られた事件など、色々あった。忙しい時だけ低姿勢で仕事を頼みながら、電話を切った後、
「あんなヘタクソの仕事出すのも慈善事業なんだ」とうそぶく制作の人間を何人も見てきた。
 またあるアニメ制作会社は詐欺まがいの商売までしていた時がある。まだアニメがセル画の時代だった頃、オープニングの動画を何枚もコピーして色を塗って、大量のセル画を作った。そして「オープニングの貴重はセル画」として一枚十万円程度で売りさばいていた。買った人間は実際にオープニングで使った貴重な一枚として大事に持っているのだろうが、そんなセル画が全国に何枚あるのやら・・・。
 制作会社の組織的な関わりだったら、ファンはそれを見破る術はない。アニメ界はルールがあるようで、全く無い。