大事件勃発!!



   俺の長いアニメ人生の中でも、忘れたくても忘れられない事件がある。

 遠い遠い昔、それは昭和五十年代にアニメ界を揺るがす大事件があった。
 そしてその事件の渦に俺も巻き込まれた一人だった。
 その当時の俺はフリーのアニメーターだった。ある地方都市で、婚約者と同棲しながらアニメの仕事をしていた。週に一度だけ上京して、仕事のやりとりをしていた。
 そんなある日、配達された新聞の見出しに驚いた。

 「アニメの監禁リンチ!」 「大人が子供の夢をぶち壊す!」

 「退社願いを申し出た女子社員にリンチの報酬!」

 新聞の一面を飾る黒抜きのタイトルに俺は度肝を抜かれた。

 そして社会面までその事件一色だった。
 その事件は、あるアニメ下請け会社で発生した大事件だった。

 男女七人のアニメーターが、同僚の女性をスタジオに監禁して瀕死の重傷を負わせたのだ。
 そして新聞の一面には、よく知る男の顔写真が…

 俺はその会社はよく知っていた…

 中に所属する人間も知っている…そして、ついにやってしまったか…という複雑な思いが頭の中を駆け回った。

 俺はおおよそのトラブルの原因は知っていた。そして被害者も加害者達のことも知っていた。
 被害者はMさんという二十代の女性。
 加害者は成人の男二人と女が一人。それと未成年の男四人の合計七人。
 実はその事件の事後処理をしたのが、何を隠そう、俺だったのだ。

 詳しくは後に述べるとして、俺はその新聞記事を食い入るように読んでいると、突然電話のベルが鳴った