春よ来い

                                                                                                           2015/12/24





12月某日、南が誕生日を迎え、またひとつ年をとった。
誕生日のケーキは、小さめのケーキを用意した。
南はお腹に赤ちゃんがいるので、最近は食事に関してバランス面も考えて食している。医者からもクリスマスとお正月は、暴飲暴食と甘い物を控えるように言われているらしく、とても残念がっている。

南は来年の2月にここを去る。そして育児に専念する。
子供は二、三人欲しいと言っているが、子供が二、三人なんてアニメーターには無理。
そしてその子供三人を大学まで行かせるとしたら、アニメーターには、ますます無理。
そのうえ家まで買うとなると、作画監督になっても無理。

実際に絵を描く「アニメーター」という仕事に絞ると、そこまで甲斐性のあるアニメーターは殆どいない。
子供二、三人を育てるのはキツい。まして「家を買って。」なんて言われたら、俺なんかレゴブロックの家しか買ってやれない(^^ゞ

南が去るのは同業者としては残念だが、南の人生を考えれば、その方がいい。アニメーターは一生の職業としては成立しにくい。収入だけを考えれば、これほど過酷で割に合わない職業は無いだろう。

そんなことよりも、この世界に入って来たばかりの南にとってのアニメ界は、驚きの連続だったろう。取り巻く環境と、決して普通じゃない人間模様に最初はビックリしていた。
南にとっては、まるで別次元の別世界。まるでマンガかドラマの中に自分が飛び込んでしまったような感覚だったろう。

そんな南を引き止めたのは、アニメ界という大人の世界ではない世界が物珍しかったのと、決してお金では買えない「刺激的な人間模様」だったと思う。いや、思うじゃなくてそうだった。
数々のイカレトンカチとの出会い、そして数々の騒動は、良くも悪くも南の人生勉強になったことと思う。
俺が南に教えたことはアニメの仕事だが、それはどうでもいいこと。そんなことは俺じゃなくても出来たことだし、もっと有意義な事もあった。

最初にここに来た頃の南は素直じゃなかった。物事が理屈でしか考えられず、想像力すら独特の観念で凝り固まっていた。
必ず週に二、三回は喧嘩だった。そんな喧嘩を繰り返して、強い信頼関係が生まれた。
喧嘩をしなけりゃ物事は解決しない。

そうそう、最近南から「犬も食わない物」を食わされた。(何だろね?)

その南だが、来年の1月と4月にオーストラリアで開かれる水彩画展に絵を出品する。
興味のある人は南に連絡して、行ってみたらいかが。(いないだろうけど)
また販売もするので、お金のある人はオーストラリアまで行ってみてはいかが?

雑草プロも年末を控えて忙しい毎日。来年こそは仕事は出来なくてもいいから「まともな人間」が来ることを願う。
まさに「春よ来い」