まもなく終わる

                                                                                                           2016/01/29





南が出産でもうじき雑草プロを辞める。予定日は3月末。
かなりお腹も大きくなってきて、体が重いと言っている。
南が辞めた一週間後、今度は土条が続いて辞める。
と思ってたら、今度はレギュラー陣の一人、元男(仮名)が退社願いを申し出てきた。前々から持病があるのはわかっていたが、寝耳に水だった。
南は出産だと前々からわかっていたから仕方ない。

だが、ここを辞めて行くアニメーターは辞める時は至ってアッサリ。
辞めるのは自由だから仕方ないとしても、辞め方が至って機械的。
レギュラー陣には「約束」として、辞める時はこの期間だけは居てくれという、人としての約束事をしている。(もちろん法的に効力は無いのだが…)
ところが、みんな辞める時は、そんな約束事は完全に反古にして辞めて行く。

このスタジオを預かる人間として、また一人の人間として、それは残念な事だと思う。
もし俺だったら、「人との約束」は、どんなに自分が大変だろうが、それは貫き通す。それが人としての最低限のマナーだと思っている。
約束が反古になれば、それまでの人間関係が全て無になってしまう。そしてそれまでの功績すら消えてしまう…
まぁ、辞めて行く人間はそれでいいんだろうが、それなりに面倒見て、いろいろと考慮してきた俺としては、残念な気持ちしか残らない。

40年以上アニメーターを続けてきた先輩として、本音を言えば、本人達がアニメを辞めるのは正解だろう。
今回辞める土条や元男にしても、技術的にアニメーターとしての未来は薄い。
そんな未来が無いことをわかっていながら、続けさすジレンマもあった。
だが辞める辞めないは本人が決めること。だからそういった類の話はしなかった。
ただひとつ残念なのは、時代なのだろうか「約束」や「筋」、「仁義」といったものは軽んじられ失われつつある。みんな自分が良ければそれでいいのだ。

長年の経験で、アニメーターのスタジオを一番上手く回転させる方法はわかっている。それは機械的にすること。
アニメーターの自由にさせ、人として感情移入もしないことだ。それが一番長持ちするし、馬鹿も見ないですむ。
だが俺は馬鹿だから、いつも馬鹿を見続けている。
でも人を欺く馬鹿よりは、馬鹿見る馬鹿の方がよっぽどマシ。

以前このスタジオには、みんなのお金をチョロまかしたMという男が居た。その事が発覚してMは窮地になった。
それでもMは俺との約束を守って、数ヶ月間仕事を全うした。
どんなに辛く居たたまれない気分だったろう…
そう思うと、Mが一人の人間として「あっぱれ」であったと感じてしまう…
Mよ、君は約束と責任だけは立派に果たした。君が清々しい人間に思えてきた。

下請けのアニメ会社は契約も無い「信頼関係」だけで成り立っている。つまり「口約束」だけで成立している。
その「約束」が守れない人間は去るべきなのだ。そう考えると、辞めて行く人間に何の未練も無い。
そして辞めて行く人間には二通りしか無い。快く送り出せる人間と、そうじゃない人間。そうじゃない人間は、辞めてもらった方が有り難い。

様々な人間が出入りする雑草プロ。そして人間が辞めて行く時、その人間の本性が浮かびあがる。そんな人間模様と人間観察がなかなか面白い。
俺は経営者じゃないから、そんなこと言ってられる。どこのアニメ会社でも、いい加減なアニメーターに困らされ続けてる経営者もいるのだろうから。

そうそう、今オーストラリアで南の絵が売られてる。これ読んでるファン一号の君、買いに行ったらどうだい?

それから、南の出産と同時にこのホームページも休止になる。メカオンチの俺じゃ更新できないからね…(^^ゞ
それまで頑張ろ。