ざまあみろ!







雑草プロの台所の水切りの台が、水垢で茶色に変色していた。

俺はそれを全員に見せて、「誰か気が付いたら、ちゃんと掃除してくれよ」と言ったが、みんな無反応…

仕方ないので今度はリーダー格の中年の女に言ったら、怪訝そうな顔で「…は、い…」

あきらかに自分には無関係だとの態度…

みんなが使う物だし、不衛生だから今度は俺がその水切り台に洗剤を付けて洗うことにした。

かなりの汚れで、なかなか綺麗にならない。一生懸命上司が洗っていても、誰一人として「ありがとうございます」の労いの言葉さえ無い…

そして水垢と格闘しているうちに段々と腹が立ってきた。

俺が差し入れした飲み物のコップさえ洗わない奴もいる。だから俺が洗ってる。そんな怒りが段々とこみ上げてきた。

そういう事を注意する先輩もいない。そもそも先輩達は、それが変だと思う感性すらないのだ…

新人が自分よりも年上の先輩に対して、「君づけ」で呼んでも誰も注意する先輩もいない…自分以外の事には全く無関心なのだ。その都度、俺が小言を言わなきゃわからない。

俺はみんなの前に行って、「君らは、すみませんの一言もないのか?」

そこまで言っても、誰一人自分には責任が無いと思ってるのか、何の返答も無い…

そこへ出かけていた南が戻って来た。俺は南を別室に連れて行って、事情を説明した。「アイツらは、中学生の部活以下の奴らだぜ、部活でも先輩にやらせないだろ? 百歩譲ってやらせたとしても、お礼ぐらいは言うだろ?」

あまりの常識の無さに南も驚いて口アングり…

「私からもみんなに注意して来ます」南はそう言ってスタジオに戻って行った。

南は先輩達が、あまりにもだらしなさ過ぎるから、新人達も同じようになるという話をしたようだった。

そして俺がスタジオに戻っても、何の反応もない…

俺は一人の新人の女の子をつかまえて、「アニメ界に居ると、こうやって一般常識が段々欠如していくんだ、そうならないように気を付けろよ。なんで俺がコイツらのコップや汚れ物を洗わなきゃならないんだ? そんなこと大先輩にやらせるか? 今回が初めてじゃない、礼さえ言えない、謝る事さえ出来ない、そういう馬鹿な人間にはなるなよ、俺はそういう人間は許さないからな!」それでもみんな無言…

ベテランの人間でさえ「すみません」の一言が出ない。

腹の虫が収まらない俺は、また別室に閉じこもった。

数時間してから詫びにきたのが、新人がたった一人。

その一人がきっかけになって、怒りはレッドゾーン!

俺はスタジオに乱入! 近くにあったモデルガンを柱に打ちつけて叩き割った! 破片が辺り一面に飛び散った。「テメエら、それでも人間か! 詫びに来たのは、新人の○○一人だ! テメエらがそのつもりなら、俺にも考えがある!」スタジオ内が凍りついた…

「ここは会社だ! テメエらがテメエの事しか考えられないのなら、俺にも考えがある。俺は明日から自分の事しか考えないからな!」

ここの連中は本気で怒らないとわかからない。わからないと言うよりも神経が鈍いのだ。一人一人は決して悪い人間じゃない。純粋だし真面目だが、人の心がわからない、自分の事しか考えられないのだ。

残念ながらそれが許されてしまうのがアニメーターという職業だ。

他のアニメ会社でもこういったアニメーターは居る。制作の人間は怒るのが面倒だから、野放しにしている。強く言うと辞めてしまうし、これほどの低賃金で仕事する人間はなかなかいない。だから仕事だけしてくれりゃ、いいやという思いで諦めてる。当のアニメ馬鹿はそれを免罪符にして仕事をしている。だいたいがアニメーターにモラルなどは求められてないのだ。

そんな自由だけを求めて、アニメーターを志願してくる馬鹿もいる。

だが、ここでは許さない。でないと本人達はますますダメになる。そして俺もダメになる。そんな人間相手に仕事なんか出来ない。

ここに居る連中はほとんどが一人前じゃないハンパ者。教えられてる立場で、いつも尻拭いは俺や南。

まして小学生、中学生でも持ち合わせてる最低限のモラルさえ無い。だったら付けるしかない。それが嫌なら去ればいいだけ。

いろんなアニメ会社に行ってもアニメーターだけは、すぐにわかる。まず振り向きもしない。(俺らは仕事してんだ)という空気を体から醸し出している。目が合っても無表情。 声をかけても怪訝で不快な表情の軽い会釈。

人を喜ばす仕事をしているくせに、陰湿で人を不愉快にして、社交辞令的サービス精神すら無いのだ。そして精神的に幼稚。

だから制作サイドの人間に「アニメーターは使い捨て」などと言われてしまう。

最近俺みたいな頑固ジジイはあまり居ない。

俺は来年60だ。こんなジジイでも遊んでくれる若い女の子はいっぱいいる。

ひ弱で根暗で社会性の無い駄目なアニメーター、ざまあみろ。