続き







休み時間にスタジオに戻ると、前日問題を起こした「わらしべ」がはしゃいでる。

休み時間だから別にかまわないが、★★君の近くでだ。

本来原画の仕事の★★君は、動画陣の尻拭いのため、休み時間返上で動画の仕事を必死でしている。

その張本人のわらしべが、女同士で馬鹿な動画の先輩と一緒にはしゃいでる。

昨日あれだけ俺に怒られて、翌日よくもこれだけはしゃげるものかと呆れるばかり。

それもよりによって★★君の近くでだ。

全く空気も読めず、他人をいたわる心さえ無い。

それを注意する先輩もいないどころか、一緒にはしゃいでる馬鹿先輩もいる。

あまりの馬鹿さ加減に最初は呆れていたが、段々と怒りがこみ上げてきた。

腹の底から怒りが頭の頂点に達した瞬間吠えた!

「テメエら! どういう状況かわかってるのか!」空腹の野獣さながら吠えた。

仕事では男も女も関係ない。

「テメエらがダラしないから、★★君が動画の手伝いしてんだぞ! 終わらないから、飯も食わず必死に仕事してる人間に対して失礼だろ!」

わらしべ本人と一緒にはしゃいでいた馬鹿先輩、それを注意さえしない人間達に対して怒りの説教!

ここに居る女達は俺や南がいないとダラける。緊張感もなく仕事する。そして群れたがる。

それに対して男性陣は、黙って黙々と仕事する。これもここでは男と女のアニメーターの違いが如実に現れる。

群れる女達は、群れはするものの、決して心を開いているわけじゃない。

くだらない話をしながら、表面的に付き合って、当たり障りの無い話で終始する。そしてお互いの腹の探り合い。本当の自分自身の姿は見せない。そこが男との違いだ。

女の方がしたたかだし、偽善的な社交性は持ち合わせている。

何故俺がそこまで言い切れるかと言うと、今まで辞めた何人もの女の子達から本音を聞いている。

こっちがてっきり親友同士だと思っていても、現実は逆だったり、そして驚くような言葉も出てくる。そんな複雑な女心が見え隠れする。

その点、男は正直で顔や態度に出てしまう。男の方がナイーブだし、うわべだけの群れに加わって騒ぐという事はない。

男女とも共通なのが、自分の好きな話だとノリノリなのに対して、興味が無い話だとあからさまにシラケ顔をする。

無言を貫き、言葉が出たとしても「ああ、そうですか…」で終わる。話が続かない。それは徹底している。

アニメーターがそうなのか、今の若者がそうなのか、それは判断に苦しむ。

ここには人に気を使える若者はいない。本人に悪気は無いのだろうが、あまりにも道徳心と優しさが欠如してる…

全員が帰った後、それでも腹の虫が収まらなかった俺は、スタジオ中に張り紙をしまくった。

「馬鹿には注意をする!」

「先輩として少しは威厳を!」

トイレにも張った。

翌日会社に着くと、今度はトンズラした男の父親から抗議の電話があったらしい。

「金を払え!」と。
この雑草プロには、いろんな人間が入って来る。今回のように、仕事を放り出して蒸発する奴、頭の回路が人と違う奴など様々だ。

その対策として、突然蒸発したり、会社に迷惑をかけた人間には、賃金を払わないという契約書にハンコを押させて入れている。

俺はここの経営者じゃないし、賃金の支払いとかは、俺には関係ない事。どうぞ勝手に揉めてくれ。

その本人からは、未だ何の連絡もない。自分自身にケジメのがつけられない奴は、どうせろくな人生送れない。

そんな訳でここは毎日「刺激的」なスタジオさ。