わらしべ貧者







会社という組織で仕事をしてると、いろんな問題が発生する。

アニメーターの場合、一番の問題は「アップ日」だ。

終わらなければ、終わるまで作業する。

早く終われば問題はないのだが、時には早く終わり過ぎて、大きな問題に発展する事がある。

それは一人の「わらしべ」(仮名)から始まった。

雑草プロのわらしべが、アップ日が近い手持ちの動画の仕事が終わらない。聞くと翌日いっぱいまでかかると言う…

ヤバい! わらしべはまだ仕事も溜まってる。

おかしいな…そんな大変な仕事は入れてないし、普通にやれば今日終わるハズ…

そうは言っても、本人が終わらないと言っている…

仕方ないから、わらしべには作業中の仕事に専念させて、わらしべに入れた仕事を他の人間に作業してもらうように手配した。

ところが、みんな自分の仕事が手いっぱいであまり余裕がない…

少し余裕のある●●君にわらしべの仕事を入れてみたものの、今度は●●君の明日の仕事が少しヤバい。

●●君のこぼれそうな仕事を◎◎君に回して何とかセーフ。

それでもわらしべはまだ手持ちの仕事があるので、翌日に回す仕事が入れられない。

これはマズい…
残った動画を作業する人間がいない…

苦肉の策として、原画を描いている★★君に原画の入れをストップしてもらい、動画に回ってもらうことにした。

翌日会社に着くとわらしべが、スケジュールに余裕のある仕事をしている…???

聞けば、今日までかかると言っていた仕事が昨日終わったとのこと。

だったら昨日の段階でわかるはずだったし、そういった報告さえ一切無い。

周りの人間は、わらしべの尻拭いのアップ日間近の仕事をしている。

わらしべ本人だけが余裕しゃくしゃくの仕事。

だったら原画の★★君まで使う事はない。

その仕事をわらしべに返そうとしたら、今度は★★君の仕事が無い…

★★君の原画の入れを止めた為、原画が他に回されてしまった。

わらしべの仕事の読みが全く、いい加減な対応の為に、いろんな人間に迷惑をかける羽目になってしまった…

アニメはひとつの歯車が狂うと、うまく回らない。一人の人間の小さなほころびが大きなほころびになる。

今回は、まさに「わらしべ長者」どころか「わらしべ貧者」のような結末だった。

たった一本のわらしべが、富を得るどころか損を得た。

だが、突然仕事を放り出して蒸発する奴よりはまだいい。

そういったトラブルと遭遇しながらも、雑草プロの一日は過ぎていく。

褐!