あしたのために







これは拝さん(武士道アニメーター参照)から聞いた話だが、もし拝さんの話が本当だったら、拝さんはアニメの歴史に残るアイデアを出している。

拝さんが虫プロに居た頃、ひとつの疑問を持ったらしい。

「あしたのジョー」に出てくる「力石徹」が何故少年院に入ったのか、原作の漫画には描かれてない…

そこで拝さんは、自分で考えたストーリーを虫プロの文芸部まで持っていったそうだ。

力石があまりにも強すぎて、試合中に観客から「八百長!」とヤジられて、その観客を殴ってしまった。
それで力石は少年院送りになったというストーリーだ。

拝「あれは俺のアイデアなんだよ。それを面白くしたのは文芸部の力なんだけど、俺のアイデアが採用されたんだ。」と嬉しそうに語っていた。

そしてアニメ版では原作には無い、力石が少年院に入るまでの話が作られたという。
今となっては調べようが無いが、拝さんは虫プロ時代に、あしたのジョーの原画を描いていたから、話としては信憑性はある。

事実拝さんは作画監督時代に、ある作品の主人公の髪型が気に入らず、途中から髪型を強引に変えてしまった実績もある。そういった現実を俺は目の当たりにしている。

後に特集本などでは、制作の人間がキャラクターデザインの人物に気を使った発言をしている。
主人公の突然の髪型の変更は、成長過程での意図だったと、苦しい言い訳をしている。

当時髪型をめぐって、拝さんと演出家のやりとりを聞いていた俺としては、それは確信をもって言える。裏にはウラもある。

そんな拝さんだったからこそ、あしたのジョーに関しても、話には信憑性を感じる。

ちなみに「あしたのジョー」に関していえば、もっと確かで面白い情報もある。

前にも述べたが、俺の兄は「江戸太神楽」という古典芸能の家元だ。
その普系図を調べてみると面白い事がある。

その普系図の赤丸一には「鉄太郎」という芸人が載っている。
その鉄太郎という人物は、もう太神楽を廃業してしまったが、後に「尾藤イサオ」として、あしたのジョーの主題歌を歌っている。

そんなわけで、こちらの話は確かなので、雑学としては面白いかも。

それから、あしたのジョーの歌詞で、だけど…ルルルル…とあるが、あれはもとの歌詞があったらしい。
尾藤イサオがヘマして、誤魔化す為にルルルル…と咄嗟に歌ったのが採用されたとのこと。

できるなら作詞した寺山修司の、もとの歌詞も見てみたいものだ。

それよりも、アニメあしたのジョー時代の、セル画の鉛筆タッチは迫力があった。
確かに今のアニメと比べると雑だけど、味わいがあった。

そしてセル画が消えたと同時に、アニメソングも消えた…

次に消えるのは、日本人のアニメーターだ。
そしていつかは、世界中のアニメーターも消える。

技術開発が進み、アニメは誰にでも簡単に作れる時代になっていくだろう。

今やデジタルでは、ソフトを使えばどんなに下手な人間が作業しても、そこそこの絵が描けてしまう。

いつかはアニメも確実にそうなっていくだろう。

昔カメラが発明された時、絵画が消滅しなかったように、アニメにもそうなってほしいものだ。「あしたのために」