イヤよぉ~、イヤ、イヤ!







お笑いのフレーズから始まるが、「嫌代」の話だ。

公園で昼食をしようと公園に向かった。公園の近くまで来ると、遠くから嫌代が歩いて来る。これから出勤するのだろうか、嫌代はこの近くにアパートを借りて住んでいる。

嫌代は雑草プロの土条の親友だ。(セクハラを見た参照)
嫌代は俺に気づいてない、俺は慌てて近くの茂みに身を隠した。
突然飛び出して、嫌代を驚かす為だ。(俺はガキっぽい)

嫌代が目の前まで来た時、俺は両手を広げて万歳の格好で、嫌代の目の前にジャンプして飛び出した。

俺「ワア~オ!」

嫌代「んっ?…」嫌代は全く動じない。

おっとりした性格の嫌代は、不思議そうな顔をしてるだけ…

俺「なんだよぉ~、ビックリしてくれなくちゃ、俺が馬鹿みたいじゃないかよぉ~。」嫌代に抗議すると、嫌代は「ウフッ、ビックリしましたよ。」と、おっとりした声で笑った。

コイツはいつもこうだ。驚いた姿を見た事がない。嫌代を驚かせる事が出来たら、ノーベル賞ものだ。
今まで何度か嫌代を驚かせようと試みたが、全て失敗。いつもこっちが恥をかく…

「どうだ? あれから五才の坊やからのセクハラはないか?」そう俺が聞くと、嫌代は「お陰様で何とか…」と答えた。

あのセクハラ騒動の後も、嫌代の身にちょっとしたゴタゴタがあったのだった。

嫌代を諦めきれなかった上司は、嫌代を手元に置きたくて、自分の意のままになるスタジオに嫌代を移動させようとガ策したのだった。それも作画監督まで使って…
原画の人間が作画監督と上司に、そう言われれば逃げ道が無い。

この話を嫌代の親友の土条から聞いた。嫌代本人からも話を聞いたが、ほぼ強引な形だったらしい。

これはマズイ…
また何かあったら困る。

以前に俺はこの会社と電話で揉めた事がある。
すると警察に通報された。
驚く事に俺は何台もの警察車両に取り囲まれた。
一緒に居た南も驚いていたが、一体どんな通報をしたのやら…

その場で身体チェックと事情聴取された後、通報者がその会社だとわかると、俺に「何かあったら遠慮なく、すぐに警察に通報してくださいね。」と何度も繰り返して引き上げて行った。
おそらく警察のブラックリストにでも入っているのだろう。

面白かったのは、警官が警察無線で、タレントの柳沢慎吾ばりに「こちら●●警察署…」とやっていたのを目の前で見れたこと。何故か俺の周りは刺激が強過ぎる。

そんなわけで、知り合いの嫌代に再び、よからぬ事があったら困る。

そこで俺は、南と一緒にその作画監督のもとに陳情に行った。
だが、それまでのいきさつと事情を説明しても、その作画監督は俺達の話に全く聞く耳を持たなかった。

俺は「嫌代は危険を感じてるから、スタジオ移動は嫌だと言ってるんです。」そう言っても「そうですかぁ? 僕と悪羅さんと三人での話し合いでは、そんな感じは受けませんでしたよぉ。」と言う。
当たり前だ、会社の経営権を持つ上司と、自分の仕事をチェックする作画監督に別室で囲まれて、説得されたら言いたい事も言えない。

だから言ってやった。「オタクの会社の女の子と制作の人間は、前回のセクハラの件は知ってるはずです。それを聞いてみて下さいよ。」

作画監督「う~ん、悪羅さん本人から、そういった話は聞いてませんし…」

当たり前だ、当の本人がそんなこと言うわけがない。
証人としての南の陳情も、嫌代から俺に届いたメールを見せても全くの無関心。

そこで俺は言ってやった。「あの人がどういう人か知ってるんですか? 過去にあの人は…、」と言いかけた時、「いやいや、過去の話はいいんです。」と言って慌てて俺の話を遮った。

俺「あの人は昔…」
作画監督「いや、いいんです。」また遮断した。
知っている…この人物はあきらかに嫌代の上司の過去を知っている。そう俺は確信した。それともグルか?

作画監督「過去の話より、今現在の話が大事ですから…」と俺に一切言わせようとしない…

何故…???
自分の会社の一人の女の子が窮地に陥ってるのに、まるで他人事…

アニメーターにはこういった人間が多い。
厄介な事には関わりたくない。
自分の仕事に影響するからだ。
仕事師としては立派だが、人としては問題だ。

この雑草プロの若者もそうだ。人にやってもらう事は当たり前だが、自分で他人にやってあげようという気持ちはサラサラ無い。

毎晩かかさず夕食を差し入れてる若者でさえ、「柳田さん、たまには缶コーヒーでもどうぞ」と言った気遣いは一切無い。あめ玉一個貰った事も無い。一度も無い。

それが多くのアニメーターなのだ。決して本人に悪意や善意が無いわけじゃない。他人に対する気遣いそのものが欠如してるのだ。サービス精神も無い。
高校生でも「先輩、毎日おごってもらっては悪いですから、今日は僕がおごります。」ぐらいは言う。

そういった若者がアニメーターになるのか、それともアニメーターになってから変貌するのか、俺の長年の経験では、残念ながら前者の方が圧倒的に多い。

この作画監督にしても、一切の私情や感情を抜いたものが、彼にとっての「仕事」なのだろう。

話し合いは、てんで話にならないから、俺と南はその場を後にして、嫌代のもとに向かった。「この際、会社を辞める覚悟でハッキリ言うんだな。」俺がそう言うと、嫌代は覚悟を決めたのか、翌日制作の人間にハッキリと拒否したらしい。その結果、嫌代のスタジオ移動は見送られた。

俺の介入も向こうには伝わったようだ。

「何かあったら俺に言えよ。」嫌代にはそう言った。あれから一年以上経つ。
そのゴタゴタ後の嫌代は仲間に護られながら、元気で今も原画を描いている。

その嫌代もいつまでアニメーターとして続くかはわからない。実家に帰省した時両親に言われたそうだ。「将来の事も考えなさい。」

現在25才の嫌代は独身。家賃だけ親の援助を受けている。
ちなみに嫌代は「書道八段」の腕前を持っている。

そんな嫌代を誰かもらってやってくれないか?(お金持ちに限る)
嫌代は親友の土条より、遥かに○○だから。

たまの日曜にメールを打つと、返事が返って来るのは必ず夕方。「今起きました。」

寝過ぎだよ(-_-)zzz