進行は作品の顔







シリーズアニメで一番残念なのは、制作サイドが弱いということ。

本来なら制作の人間が、陣頭指揮をとって総監督的立場で動かないと事はスムーズに運ばない。

ところが、制作は大体が演出の言いなりという会社が多い。そして「制作進行」という仕事自体を軽んじている。

制作進行という仕事は、いってみれば業界人にとっては作品の顔だ。スポークスマンであり管理者だ。

俺は制作進行を見れば、その会社の品位や体質がわかる。

そういう事でさえ、親会社自体がわかってない。

そして優秀な進行も居れば、駄目な進行も居る。

駄目な進行は、自ら自分は単なる「使いっ走り」の仕事だと思っている。進行という本来の仕事をわかってないから、進行どころか「後行」で、流れを止める。

残念ながら多くのアニメ制作会社は、進行に仕事は教えても、人間教育はしていないだろう。

言葉は悪いが、パシリ的な扱いをしているアニメ会社もある。

何の人間教育も受けず、パシリ扱いを受けた進行が、やがてデスクになり、プロデューサーになる。

そして大学の運動部同様、今度は弱い者イジメの悪循環の連鎖。

テレビ局やスポンサーには平身低姿勢だが、現場の人間には真逆。

自分達が潤滑油の役目もあるという事がわからないから、反対に喧嘩を売って反感を買う。

演出もまた進行という仕事を軽んじている。

そんな光景を何度も見てきた。

制作サイドが弱体化していい加減だから、演出にさえ意見や注意が言えない。だから馬鹿な演出はますますつけあがる。

フリーで仕事をしていた頃、約束していた仕事が入らない。

そこで進行に連絡すると、「演出さんのチェック待ちで、今日は出ません。」それが2日続いた。

3日後、「演出さんが2日間、町内会の旅行なんです…」と進行。

5日後に再び電話をすると、「土日は演出さんは休みです。」と、さも当然という態度。

さすがに俺はキレて進行に激怒!

それでも腹の虫が収まらず、今度は制作デスクに電話。

演出という仕事は、流れ作業で出来ないのはわかっている。だからチェックの遅れは仕方がない、だが町内会の旅行で休んだからには、土日返上で仕事してもらうのが、進行の仕事だろうという趣旨の話をした。

ところが、その制作デスクから帰ってきたセリフは、「キツい言葉ですねぇ」…

こっちの方がキツい。一週間無収入になるのだから…

制作デスクですら、このレベル…

こんなのはまだいい。知人の作画監督なんか、「明日は打ち合わせが出来そうです」の言葉を信じて、結局1ヶ月待たされて、その作品を降りた事があった。

知り合いのアニメ会社でも、演出が掛け持ちの仕事で原画チェックが遅れ、1ヶ月待ったという事があった。こういった事例はまだまだある。

そんな事があっても、アニメーターには何の保障も無い。

こうして制作全体が弱いから、進行はますます弱くなる。

中には真面目で優秀な進行もいる。フリーで仕事していた頃は、担当の進行によってテンションが違った。

この進行さんの為なら徹夜もいとわない! と。

この雑草プロは、スケジュールは必ず守る。どんな事があっても守らせる。

俺は雑草達に言っている。「俺が君らを怒るのは、君らを護る為だ。もし君らがいい加減な仕事をしたら、俺は君らを護れなくなる。一生懸命仕事をして、理不尽な事があった時は俺の出番だ」と。

もし制作進行の人がこれを読んでいたら、肝に銘じて欲しい。

あなた達は現場の人間にとっては「作品の顔」なんです。

アニメーター達はあなた達をしっかり見ています。

あなた達の対応ひとつで、現場の流れは変わります。それほど重要な仕事なのです。

あなた達の苦労もアニメーターは充分わかっています。

ですから、この雑草プロでは、あなた達に敬意を持って、訪れた進行さんには、必ず全員で挨拶をしています。

「お疲れ様です!」