恐れ知らず
雑草プロに新人が入ってきた。23才と20才の男二人。
23才の男は19才で突然絵を描くことに目覚めたらしい。(遅すぎる)
そして絵を描く為に「縫製会社」で働いていたとのこと(意味がわからん???)
その理由を聞くと、縫製会社なら洋服の型紙に絵を描けるからという理由(トンチンカン…)
まっ、それは置いといて、実際に絵を描かせてみたら、これがトンデモナイ!!
絵を冒涜してるとしか思えない!!
まだ普通の中学生の方がはるかに上手い!!
渡した見本の人物デッサンとは別物で、まるで妖怪人間!!
もう一枚の女の子は関節さえ無い!!凄まじい衝撃を受けた!!
ところが、この男よほど自信があったのか、雑草プロに入る前に漫画を描いて、ある雑誌社に持ち込みまでしたらしい!!(恐ろしい…)
ところが、もう一人の20才の男も、負けず劣らず恐ろしいほど下手!!
この男も自信家なのか、雑草プロに来る前に業界でも大手で、超有名プロを何社か受けたらしい…(無謀としかいいようがない)
話を聞くと「アニメーター不足って聞いてたものですから、誰でもアニメーターになれるって思ってました。」
知らないって恐ろしい…
まっ、それも置いといたとしても、「絵に失礼!!」俺には本当に絵を冒涜してるとしか思えない…
だから言ってやった。「これは絵じゃないよ…」
そしてデッサンについて話し出したら、!!!!!
そのデッサンさえわからない!!
今度は渡したデッサンの資料の輪郭をトレスしてから絵を描こうとする…
デッサンぐらい中学の美術の時間にやっただろうに、それさえわからない…
そうさ、ここはそういう人間でさえ入れる。第一、実技テストさえ無いのだから…
そのうえ俺には合否の権限も無く、絵のハンパ者を次々と送り込まれ、それを一流のアニメーター育てろというのが土台無理な話。
でも俺はやるだけの事はやる。本人が諦めない限り教える。例え無駄でも、無駄かどうかは俺じゃなくて本人が決めること。
挫折して去ったとしても本人は納得するだろう。それが俺の役目。
俺はこの二人の新人の描く絵は不愉快だけど、二人の人間性まで否定してる訳ではない。
今この二人は下手ながらも、毎日スタジオに通いながら練習の日々を送っている。1カ月が過ぎ、まだまだトレス線すら引けないが、意欲だけは失せてないようだ。
アニメ界に憧れだけで入って来る若者も多い。金儲けで来る人間はまずいない。
勘違いして欲しくないのは、アニメは会社という組織に在籍している限り、孤独に自分勝手に作業することは出来ない。
俺は物事はハッキリ言う。
俺はアニメ界から弾き出され、排除された人間達を指導している。雑草プロはそんな会社だ。それでも長い年月の間にはビッグネームになる奴も出現する。
そんな会社があってもいいとは思うが、心が病気だったり会話が成立しない人だけは御免被りたい。
今回の二人は例え下手でも「普通の会話」が出来るからまだいい方。
そのうちまた「恐れを知らない」若者達がここには来るのだろう。
だが、一番恐れを知らない人間は俺だ。それだけの覚悟と信念を持ってやっている。