人間風車







この雑草プロには良くも悪くも、いろんなドラマがある。

もしもこれがドラマになったとしたら、どんな役者が俺を演じるのだろうか?

自分で想像してみたが、当てはまる役者がいない…

いろいろ想像してみたが思い当たらない…

性格が何となく近いのを無理やりこじつけると、一人だけいた。

「アニマル浜口」だ。(嫌だな…)

自分を第三者的に見ると、そんなところかもしれない。端から見ると間抜けに見えるだろうし単細胞…

ただ、あそこまで娘や他人に自分の夢は押し付けないし、浜口みたいにナルシストじゃない。

ドン・キホーテ的な所は似ているかもしれない…

言いたくないけど、美男子じゃないのも一緒だ。

雑草達が俺の事をどう思っているのかわからないが、別にどう思われていてもかまわない。

俺はただ気持ち良く仕事したいだけ。

雑草達を理解しようとしても、世代の違いだけは、どうにもならない。

怒られ慣れていない人間も居るし、個人主義が多い。

俺は親や教師にブン殴られた世代。今と違って、世間的に教師が「聖職」扱いされていた時代だった。周りの親達も教師に対しては、「先生、ウチのせがれが悪いことしたら、どうぞ遠慮なくブン殴って下さい。」などと、お願いしてた時代だ。

そしてその通り体罰があった。ゲンコツ、ビンタは当たり前。悪くなくても連帯責任とらされた。そして教師にも親にも「巨人の星」さながら育てられた。

さすがに俺は「星一徹」のように雑草達に手は出さないし、その時代を肯定するわけじゃない。その代わり言いたい事は言う。

この前ある俳優がテレビで「僕は怒った事が無い。」

「怒って嫌な気持ちになるのは人生の損だ。」という事を語っていた。
耳障りはいいが、俺はそれを見て「可哀想」だと思った。

泣くも笑うも怒るも人間の感情で「損」は無いはずだ。そのひとつを自ら除外してしまう方が「損」だ。

俺は目の前の問題をクリアしたいから怒る。怒ってこちらが「真剣な姿」を見せないと、わからない人間もいる。

おだやかに優しく、理論的に話せばわかり合えるなどというのは幻想だ。

そんなお人好しの人間ばかりじゃない。

人は真剣を示した時に、真剣に向き合ってくれる。

そう思ってる。

こちらが真剣に向き合っても、相手が避ける場合もある。

そういう場合は、「ああ、俺はこの人とは、この程度の運命の糸だったんだな」と思って諦める。

揉めてそこでストップしてしまう人間と、それまで以上の信頼関係が築ける人間と、その二つのどちらかだ。俺の場合は、そういう結果になっている。

それはさて置き、アニメーターの場合、早い話上手けりゃいいわけだが、ここにはなかなか入って来ない…

今月も新人がまた一人入って来たが、アニメの知識が全く無い…

タップを裏返しに置いて「これは何ですか?」と聞いてくる…

絵を見たら、全く絵を描いた事が無いであろうという超低レベル…

中学生の俺の娘の方がまだ上手い。そのうえ新人の年齢は28歳。アニメを始めるにしても遅すぎる…

アニメ界に入って来るからには、最低限のアニメの予備知識ぐらいは、自分で調べて来てほしいものだが、こういった人間も多い。

一度社会に出てみたものの、上手くいかない…

そして自分の人生を振り返る…俺の人生はこんなもんじゃなかったはずだ…

子供の頃の夢は何だったんだろう?

そうだ!

アニメをやろう!

子供の頃に憧れたアニメを描いて、その主人公達と一緒の空間に居られる。

俺ならできる! わずらわしい人間関係とも、おさらばできる。

そう思って、ここに来る中年に近い人間も多い。それを実技テストもしないで入れてしまう…

そしていずれは夢敗れて去って行く…

そんな「夢追い人」がここには多い…
足手まといなだけで、モノにならないのはハッキリわかってる。

南によく言われる。「柳田さんて、何か問題が起きた時の方が元気ですよねぇ。」

問題や怒りがあったら、それをアドレナリンに変えればいいだけ。簡単なこと。

俺は文句言いながらも、雑草達から元気もらってる。

でも、アニマル浜口は嫌だなぁ…

アニマル浜口と戦った「人間風車」のビル・ロビンソンの方がいい。国際プロレスを見ていた世代にしかわからないか。

問題だらけの風を受けて、俺の風車は今日もカラカラ回ってる。