おこりんぼジジイ
「はい、はい、申し訳ありません…以後気をつけます…」ベテランアニメーターの葛西君(仮名)が何やら電話で怒られているようだ。
電話を切ったあと、何事か聞いてみると会社の経営陣からだった。
葛西君が会社の備品を買って、領収書を提出したところ、「この高額な物は何を買ったんだ!」という、お叱りの電話だったらしい。
葛西君から詳しく事情を聞くと、高額と言っても千円である。
会社で使う電池が無くなり、安売り店に行ったところ、千円で大量に売っていたとのこと。経済的なので気を利かせて、それを買ったところ、「千円以上の高額な物は買うな!」とのお叱りの電話だったらしい。
どこの世界でもそうだろうが、一番弱い立場の人間は難儀する。
このアニメ界でもそうだ。最近はカット袋にあがった動画や原画、及びラフ原、レイアウトなどを入れる順番がある。
ハッキリ言って、こんなのは制作や進行の手抜きである。
昔は無かった。
シートにあがった動画を挟んで、後は入っていた通りに入れれば済んだこと。後々の区分けは進行の仕事。
また作業手順の注意事項に、合成する動画には必ず何と合成するのか、動画の一枚一枚に記入する事、と書いてある馬鹿な親会社もある。
これは仕上げの手抜き作業を動画に押し付けてるにすぎない。
動画が書いた合成伝票を見れば一目瞭然わかる事。
また、ふざけた事に何と組みになるのか一枚一枚に書く事とある。これも仕上げの手抜き。
シートを見れば簡単にわかる事。
早い話、手に取った絵が何と絡むのか、絵に書いてないとダメなのだ。
つまり、伝票やシートに目を移動させる手間を省きたいだけの事。
こんな事がまかり通ってる。
海外から評判が悪い輸入水産業界によく似てる。
日本に出荷する魚だけ、箱詰めではダメらしいのだ。一匹ずつ綺麗に梱包を命じられるらしい。他の国ではそこまでやらされないとのこと。
やれないなら、他の会社と取り引きすると脅す。
アニメ界とよく似てる。
自分達だけの都合で、自分達の手間を省きたいだけ。そして誠意と善意を強要する。そして誠意で応えると、いつしかそれがルールになる。
お互い様の精神が無いのだ。
理不尽な事をハッキリ言うから、俺は権力のある奴には嫌われる。
言わなきゃわからないし、言ってもわからない。だったら耐えるより、嫌われても吐き出した方がマシ。
お互い気持ち良く仕事したいから、取引先の進行に告げると、明らかに見下した態度で不快感を表す進行もいる。
たった少しだけ目線を動かす行為が、面倒だと言うならば、そのうち進行という職業も無くなり、各自責任を持って、次の工程作業まで繋げなどと言い出すに違いない。
「仕事出してやってるんだから」と…
そしてそのうち、原画も動画も進行表を付けながら仕事する日がくるかも。
もっと酷いのが、ある下請け会社のスタジオに、夜中に連絡さえ無く勝手に仕事がぶち込まれている事がある。それもどこの会社も引き受けないであろう大変な動画が。
それでもその会社は抵抗ができない。仕事が少ない時に仕事を回してもらえなくなるためだ。そんな一方的で金にもならない仕事を泣く泣くやっている。
割を喰うのは中で頑張っている若者達。ますます食えなくなり、道半ばリタイヤして行く悪循環…
それを変えるどころか、今はさらにコストを下げる為、海外に働く人材を求めて進出していく。
今、国は日本のアニメを海外に広めようと、国の予算を使って指導者を派遣して人材を育てるという。
誰が得する? 国内はますます空洞化して、いずれ人材さえ育たず、アニメーターを希望する若者もいなくなるだろう。
おこりんぼジジイは、まだまだ頑張るぜ。
今日(平成26年6月9日)
雑草プロの南の義理の母が他界した。
会社からは何もない…せめて貧乏な雑草達から、小銭集めてご冥福をお祈りします。