糞紙

                                                                                                           2014/08/16





一人会社に残った夜。メモをしようと近くにあった鉛筆削りを使おうとしたら、削りカスが満杯になってる。捨てようと思って削りカスのケース引いたが、ギュウギュウ詰めになっていてビクともしない。力まかせに引っ張ってやっとの思いでスライドに成功。だが辺り一面に削りカスが散らばった。

他の鉛筆削りも調べてみたら、殆どの鉛筆削りが同じような状態…だらしなさは駄目なアニメーターの専売特許。

翌日全員を集めて、毎週土曜日は「削りカスの日」と定めた。昼休み前に全員の鉛筆削りカス集めて捨てる日を設けたのだ。
いちいちこんな事まで決めないと駄目なアニメーター達は、ますますだらしなくなる。

仕事に関してはだらしないが、余計な事には労力を使ってる。
すぐ捨てればいいのにゴミを紙で作った器に貯めて、机の上に置いてある。チビた鉛筆を綺麗に集めて並べたり、鉛筆同士を瞬間接着剤でくっつけて、鉛筆2本分の長さの鉛筆を作ったりしてる。最近のアニメーターによくある光景だ。

何故か定規に一円玉2枚くっつけてる馬鹿もいた。これじゃ細かな線はズレる。
動画机の上と棚は仕事とは全く関係のない私物で溢れてる。机の風防の棚も私物が詰まってる。そこは資料や動画用紙を入れる場所。机の使い方からして間違ってる。

翌日それらを注意して片付けさせた。

駄目なアニメーターの自己管理はいい加減だ。個人主義の影響がこんな所まで現れてる。

「こんな事言うのは、余計なお世話で言いたくないけど、 君ら晩飯ぐらい食ったらどうだい。」

中には晩飯も食わずに仕事している新人もいる。帰ってから食べるにしても、その頃はもう12時近くになる。それじゃあ体にも悪い。それに空腹状態じゃ集中力も物覚えも悪くなる。仕事出来る奴はみんな自己管理はしっかりしてる。
昼飯用と晩飯用の握り飯を二食用意して仕事に励んでる。

ところが仕事出来ない奴に限って、時間だけ浪費して飯も食わずにダラダラ仕事してる。

それで仕事があがればまだいい。そんな奴に限って一日数枚の動画しかあがらない。影も付いてないギャグキャラの絵でも、一日かかってやっと数枚という有り様。他の会社にはこういったレベルの人間はいない。まず雇わない。これも雑草プロの運命。

自分が何故出来ないのかを考えない。原因を探って何かを試すとか、工夫するという事もない。根本的に趣味の域を出ないのだ。出来る先輩の絵も見ないし、下手な自分の絵だけ見て、自分だけの世界で仕事してる。

今日も先輩達に無礼を働いて俺のカミナリが落ちた。
先輩達が大変な仕事を受けもってるから、彼らは楽な仕事にありつける。

今日、何人もの先輩達が、2日がかりで仕上げた大変な動画が完成した。
見にくるように言ったが、殆どの新人は無視して席を立たない。
彼らはその「失礼」そのものさえわかってない。コイツらは向上心があるのか?…

それでカミナリ。
新人達の馬鹿さ加減に、多勢に無勢で時々俺が変なのかと錯覚してしまうこともある。

それでも毎年数十人の素人の新人の中から、一人ぐらいは戦力になる人間は出てくる。

今年の4月に入った新人達は、俺の40年間のアニメ史上、最低最悪の新人達だ。一番の問題は「絵が描けない」そして向上心も無い。今の態度で仕事を続けるなら、ここに来る必要もない。

俺はプロだからハッキリ言う。過去も現在も未来も使い物にならない。それは俺だけじゃなく南や他の人間も認めるところ。

彼らの存在は、俺には何の得も無いが、会社には半分利益をもたらすのだから、せいぜい俺たちのトイレットペーパー代になってるのだと考えれば納得がいく。 「糞紙」が嫌なら上手くなって見返してみな。