動画チェックという仕事

                                                                                                           2014/08/21





最近は少し疲れ気味だ…
雑草プロのマイナスのアドレナリンがキツ過ぎて、頭が噴火しそうだ。

「次元の違う」人間を真剣に相手すると疲れる。
閉ざされた空間に漂う異様な空気と、目に見えないモウリョウ逹は彼等自身が造り出している。

彼等はそれが普通だと思っている。
自分の世界だけでマイペースを貫き、今日も彼等は満足している。

自分が造り出したモウリョウに勝てなければ、いずれは戦い敗れて去って行く。
それでも雑草プロのレギュラー陣だけは、モウリョウに打ち勝ち、毎日仕事に励んでいる。

しかし敵のモウリョウは外からもやって来る。

先日もある会社から、上から目線のリテークが来た。
要は今日はオーケーでも明日は駄目みたいな、その都度変わるいい加減なリテークだ。
もうこの作品を始めてから一年以上経つ。それならば最初の段階で伝えて来るべきである。

それはそれとして、もっと呆れるのは、スタッフの個人個人の名前を挙げてメモがある時もある。
栄さん「この振り向きはよく出来ました」うんぬん。長谷川さん、あなたはうんぬん…書かれた文章には上から目線で愛は無い。
まるで下請けを教育してやってるんだとばかりの傲慢な対応。

こんな扱いだと、作業してる人間のテンションが下がってしまう。
そこで俺は、「君ら、こんなリテークは気にしなくていいぞ、制作に伝えて話し合ってもらう。」そう言って、彼らを慰めた。

元請けの会社は下請けを見下している。
俺から見ると見下してる人間の方がが哀れだ。結局はその程度の人間なのだ。

「動画チェック」という作業は、人を見下す権利を与えられてる仕事じゃない。この業界ではハッキリ言って、大体が原画に成れない人間がやっている。もしくは二流の原画マン。
本人もそれはわかっているから、自身の腕の未熟さと、その鬱積した劣等感意識が、権力を得たと勘違いして他人に向かう場合が多い。

勿論真面目で優秀な動画チェックもいる。
チェックしている人間の心と人間性は、その出したリテーク内容と文面で、おのずと明らかにわかる。
文章が横柄な書き方なら、その人間は「未熟な人間」だと思って間違いないだろう。

俺もフリーの頃は偽名で数多くの「動画チェック」をしてきた。中には実家の雷神社をもじって「雷神勤」とした時もあった。

俺の長年の経験上、多少でも権力を持つ者は下手に出た方が上手く行く。駄目出しでも、そこに愛が無ければ単なる嫌みとして受け止められてしまう。
こんなデタラメそうに見える俺でさえ、そんな愚かな事はしなかった。

俺の場合は、リテークを出す場合でも、「動画様、今回は丁寧な作業をして頂き有り難う御座います。」という労いの文面を必ず添えて本題に入った。
または最後に、「作業は大変でしょうが何卒よろしくお願いします。」という文章を付け加えた。

お互い顔も知らない相手である。まして自分が面倒を見てる相手なら別だが、全く別の会社の、顔も知らない相手に対して横柄な態度は取れない。お互いアニメーター同士。互いを尊重して良好な関係を築くのがアニメという歯車の一部。
アニメーターも人の子、こちらが丁寧な対応を見せれば、作品にも愛着を持ってくれて、困った時でも無理をしてくれるのだ。

そういう人間心理と、人としてのマナーを持ち合わせてない動画チェックが多いのも事実だ。
それを注意する制作の人間も居なければ、教育をする上司も居ない。

キチンと対応していれば、その会社のイメージは上がるし、ゆくゆくは無理の利く存在として良きパートナーとなってくれるはずなのだ。それすらわからず、味方どころか、敵に回してしまう。たった一人の愚かな人間のせいで…
そのへんも元請け会社は考えなければ、いずれは損をする。

すでに雑草プロの上手い動画マン逹はこの作品から手を引いた。これからは新人達がメインになる。そういったマイナス面もある。
そんな事すらわからない、子供じみた世界に自分が居るのだと思うと、ますます体が重くなる。

疲れた体を引きずりながら家路に着くと、雑草プロOBの華奈ちゃんから豪華なお中元が届いてた。
アニメ界には気薄なその気遣いに、再び元気が湧いた(単純)

よし、明日も頑張ろう!