駄目な進行

                                                                                                           2014/11/06





最近大手のアニメ会社の進行から、社内の原画マン個人個人に電話がかかってくる。
話に内容があるのならまだいい。
ところがその内容が「ウチの作品を優先的にあげてください。」

この雑草プロには、スケジュールを管理する制作の人間がいる。その人間を差し置いて個々の原画マンに定期的に電話をかけてくるのだ。
「仕事熱心」を全く履き違えてる。

ここの制作の人間から了解を得ているというのだが、制作の人間に対して、よく「言えたもの」だと思う。
裏を返せば、ウチの制作の人間に対して「あなたを信用してませんから。」と言うのと同じだ。

原画マン個人にしても、そんな事を言われても困ってしまうのだ。
スケジュールに関しては、会社の上司である社内の制作の人間が握っている。
その上司から「こっちの作品を先にやって。」と言われれば、それに従うしかないのだ。
そんな無意味な電話をかけてくる。

個々の作業状況は、進行表を見ればわかるはずだし、全体の流れを把握したければ、ウチの制作の人間に聞けばいい。
そんな無意味で礼儀に反した事さえわからない。

それとも「大手の進行」という威厳でも示したいのだろうか?…
原画マンにしても、大手の進行と会話してもテンションが上がる訳でもない。感動などもしない。それだったら「原作者」の励ましとか、「主役の声優」のエールの方がまだマシだろう。

そんな無駄な電話の光景を見て、俺は電話番に、「今後は原画マン個人には、一切取り次ぐな。」と指示した。
今後はスケジュールを管理する制作の人間に回すように徹底した。

アニメーター同様、進行にも優秀な進行も居れば、駄目な進行も居る。

以前ある大手のアニメ会社に嫌われ者の進行がいた。
下請け会社に対して完全に見下していた。
その性格は外からだけではなく、同じ会社の同僚の進行達からも完全に嫌われていた。
とにかく早く帰りたい。そして協調性に欠けた性格から、進行の仲間内からも完全に嫌われていたのだ。

とりあえず、名前は「嫌われ者君」とでもしておこう。
その嫌われ者君は、仲間の進行が、どんなに困っても決して助けなかった。

「なあ頼むよ、俺の方が早い話数だし、先に放送するんだ。だから●●プロに出す仕事に少しだけ動画を割り込ませてくれないか?」
「それじゃ、俺の担当の話が遅れる。絶対に駄目だ。」

そんな仲間の哀願に対しても、嫌われ者君は、断固拒否。
そういった訳で、雑草プロに時々、嫌われ者君に内緒で割り込みの仕事が入ってきた。

進行「割り込みの仕事を入れた事は絶対、嫌われ者には内緒にして下さい。」進行は必ずそう付け加えた。
こちらとしても、作品の早い話数を優先させるのが筋、そんな時は嫌われ者君に内緒で作業を手伝った。
そんな自分勝手の嫌われ者君は、仲間からも全く相手にされず、どんなに重要な情報でも彼の耳に入る事はなかった。

ある時、南が重要な情報を入手した。それを嫌われ者君が来た時に確認した時のこと。
南「大変ですねぇ、近々制作体制が変わるんですってねぇ、進行さんも少なくなるって話ですけど…」
南の話を聞いた嫌われ者君はビックリ!!みるみる顔色が変わっていった。
「ほっ、ほんとですか!」
なんと、嫌われ者君、寝耳に水で一切そんな話は耳に入ってなかったらしい。

そんな重要な事も仲間からも知らされず、自分の会社の情報を他の会社の人間から、教えてもらうというマヌケな話…
大慌てで帰って行った。

その後、会社との交渉で、何とか進行の人員削減は無くなったみたいだったが、嫌われ者君、それから南に優しくなった。
横柄な態度は消えて、普通になった。

アニメ界も忙しさにかまけて、進行のマナー教育が出来ないならば、「進行学校」でも作ったらどうだろ?
そこを卒業しなければ、進行にはなれない。仕事のシステムなどは教えなくていいから、進行としての「マナー」だけでも教えてもらいたい。
下請けの現場としても、変な進行が居なくなるだけマシにはなるのだが…

アニメ界は人間模様のマンパワーが一番大切。みんなそれを忘れてる。
お互い気持ち良く仕事しようじゃないか。