ささやかな団結
雑草達の一日の作業時間は長い。
ここ雑草プロでは、みんなAM10時に出勤して来て、PM11時ぐらいまでは作業している。
昼と夜の休み時間を差し引いたとしても11時間は机に向かって作業している。
中には休み時間を惜しんで、作業する人間もいる。
スタジオの中では、一台のCD機器からBGMが流れ、みんな黙々と仕事をしている。
ここは他のアニメ会社と違って、個人個人のヘッドホンは禁止。
ヘッドホンで耳を覆って、音楽を聴いてないと集中できないという人間もいるだろうが、そういう人間に限って集中力がない。
集中力のある人間は、そんなこと気にしない。
ましてここは雑草軍団だ。
覚えることがまだまだある。自然と耳から入ってくる情報さえ遮断してしまう。
耳が完全に塞がってるから、用事があっても聞こえない…
仕方ないから指で肩を突つけば、驚いて跳ね上がる。
そんな状況だと後輩が先輩に聞きたい事があっても遠慮してしまう。
全てを個人に委ねてしまうと、まとまりがつかなくなる。
自由にやりたいなら、フリーになってやればいいだけの話。
ここには自分の仕事が終わっても、勝手に帰る人間は一人もいない。
お互い様の精神で、みんな助け合いながら仕事をしている。
下請け制度が招いた、作品に対して失われつつある団結力をささやかながら保持してるのが、ここ雑草プロだ。
親会社からアップ日だけが伝えられ、流れ作業だけをする。そこには心もなければ感情も無い。
どこかのプロデューサーみたいに「言われた事を黙ってやればいいんだ!」では、描いている当人達ですら、感情移入する隙間も失せる。
雑草プロに限らず、俺の知らない多くの雑草達が、貧困に喘ぎながら、今もどこかで夢に向かって、アニメ界の一部を支えている。