業界用語
「あのぉ、この原画に指示があるT光(ティーコウ)の質問なんですけど…」新人が尋ねてきた。
ティーコウとは撮影での特種効果の事で本来は「透過光」と書く。
それの略で最近はT光と使われる場合が多い。
「止めてくれよ、ちゃんと透過光って言ってくれよ、俺それ嫌いなんだ」
俺がそう言うと、新人は「はあっ?」って不思議そうな顔をしてる。
だから俺は説明する。「アニメーターって以外とバカなんだ、ティーコウの始まりは、漢字で透過光って書けない奴が、トーカ光って表示するようになって、それからT光ってアルファベットと組み合わせるようになったんだ」新人は「なるほど…」と聞いている。
続けて俺が言う「意味のある省略ならいいけど、ティーコウはカッコ悪いだろ? 日本語の透過光の透をなんでアルファベットのTに置き換える必要があるんだ? 動画用紙のことをD用紙って使うか? 色鉛筆をE筆って使うか?…」
そんな話をすると、新人は苦笑いで「確かにカッコ悪いですね」と納得するが、古い人間の俺は、そんなどうでもいい事を時々こだわってしまう。
ロサンゼルスをロスなら仕方ない。
だが、日本語を無理やりアルファベットにして略する意味がわからないし、マヌケに思う。
木村拓哉のことをキムタクと略すならまだしも、「Kタク」とは略さないだろう。
言葉と言うのは、時代と共に変化していくものなんだろうけど、まだまだいっぱいある。
「ポリ公」も変だし、一番わからないのが「食パン」…
食べないパンてあるのか???
透過光をTコウなんて言ってると、未来が「遠か功」になっちまうよ。