悪しき童(ワラシ)



まもなく新しい年を迎えるが、昨年の正月は忘れられない出来事があった。

それは年が明けて各アニメ会社の仕事が始まった頃、街で知り合いの女の子と遭遇した。

「柳田さん、話を聞いてくれますぅ~?」

ゲンナリした表情でそう話すのは、嫌代の会社の電話番の女の子。(セクハラを見たを参照)
マイクベルナルドに似た(失礼)その女の子はマツ子(仮名)という嫌代の親友。

そのマツ子の話によると、年末に帰省して家族と一緒に紅白を見ていたら、突然電話のベル。
電話をかけてきたのは、マツ子の上司の悪羅(仮名)だった。(セクハラを見た参照)
悪羅は散々嫌代にセクハラをした挙げ句、俺と南に逆恨みをした男だ。
大晦日に家族と紅白を見てる最中に上司が実家まで電話をかけてくるのは、会社で何かあったのかと思ったマツ子は焦った。
すると悪羅はいきなり「嫌代の携帯番号を教えて欲しいんだ」と言い出した。

「えっ、どういうことでしょう?」不安を感じながらマツ子が言うと、

悪羅は「親友の君なら知ってると思って、電話したんだ」と言う。

悪羅の嫌代に対しての一連のセクハラはマツ子は充分知っていたし、嫌代本人からも相談を受けていた。

瞬時にこれはマズいと感じたマツ子は「いいえ、私は仕事以外で嫌代さんとは接点は無いんです」と答えた。

すると、悪羅は「そんなハズないだろ、君は電話番と会社の雑務もしてるはずだし、調べてくれないか?」と食らいついてくる。

マツ子「何かあったんですか?…」

悪羅「いや、俺はただ嫌代の本心を知りたいだけなんだ」

マツ子「本心と言いますと?…」

悪羅「嫌代は知り合いの柳田に言いくるめられてるんじゃないかと思ってな…」

マツ子「と、言いますと?」

悪羅「嫌代がアイツに何か弱みを握られていて、本心じゃないことを言わされてる可能性だってあるんだ!」

マツ子は悪羅の都合のいい解釈と発想に驚いた。

「だから、今制作の○○に命じて嫌代の履歴書を探して実家に電話しようとしてるんだが、肝心の履歴書が見つからないんだ」その言葉にマツ子は驚きと同時に背筋がゾッとしたらしい。

マツ子は会社の電話番という立場から、嫌代に対する執拗なまでの誘いは聞いてるし、現にセクハラも観ている。
上司という立場を利用して、60過ぎの男が20代前半の女の子への一方的な愛…

悪羅は続けた。
「君も知ってるあの柳田という男はなぁ、とんでもない男なんだ!」と興奮しながら、その後一時間近くにわたって、俺の悪口を言い続けたそうだ。
マツ子の方はウンザリしながらも話を最後まで聞いて、嫌代の連絡先は知らぬ存ぜぬの一点張りで押し通したそうだ。
マツ子はそう話し終わると、

「だから家族にまで、お前の会社は大丈夫かって疑われちゃいましたよ」と怒っていた。

ところが、翌日の元旦早々に別の部下にも長時間の電話があったらしく、父親の怒りを買った。
「元旦早々にそんなくだらない電話をしてくる会社なんて、ろくでもない! そんな会社は辞めなさい! 辞めない限りは仕送りはストップする!」
そんな父親の言葉とは関係なく、その人間は自らの意志で退社していったそうだ。

その事実は瞬く間に広まり、何人かの有志達によって「嫌代包囲網」が作られ、その事実は社長にも伝えられた。

悪羅はさすがにヤバいと思ったのか、嫌代への執拗な執着は消えていった。

いや、ひょっとしたらマイクベルナルド似のマツ子の必殺パンチが飛んでいたのかも。

相手は五歳の子どもが住みつく甘えん坊のオジサンだもんな。