幻想

                                                                                                           2018/11/14





「女房の前にマリア様が現れたんだ!」
あの男が近しい人間達に、そうふれ回っているようだ。
あの男とは、このホームページに何度も登場する赤村プロ(仮名)モンスター社長本人だ。
かつてその話は俺も本人から何度も聞いた。

その話を要約すると、病気の妻が床に伏せってると、目の前にぼんやりとした光が現れたと嫁が言う。
その光を見ていると、心地良くなって、安らかな気持ちになっていったらしいという話だった…
その話を嫁から聞いたあの男は、時々訪れる協会の神父に話したそうだ。
すると神父は、「それは凄い! それはマリア様ですよ! あなたの奥様の前にマリア様が現れたのです!」
あの男は驚き、嫁の病状はその後回復してきたので、神父の言葉と、その超常現象に感謝した。
神父「それは紛れもなくマリア様です。」
「俺の女房はマリア様に命を救われたんだ!」
そう言って、ことあるごとに、周りに吹聴していた。どうやら、その話を今でもしてるらしい。

そんな話を耳にした知り合いが、俺に知らせてきた。
俺    「俺も知ってるよ。なんだ?、まだそんなこと言ってるのか?…」
知人「その話ホントなんですかね?…」
俺    「嫁さんが寝ぼけてただけだろ。」
知人「じゃあ、神父の言葉は?」
俺    「そもそも、その神父が胡散臭いんだ。その神父は一度も会った事もない俺を邪悪な人間だと、あの男に散々吹聴した神父なんだからな。」
知人「えっ!、何の目的で?…」
俺     「知らないよ、あの男から俺の愚痴を聞いただけで、俺を邪悪な人間だから、くれぐれも気をつけなさいって断言したらしんだ。」
知人「そうなんですか!、確かに怪しいですねぇ。」
俺    「きっと神を利用した金儲けなんだろ。都合のいい事を言って、また献金させるとか…」
知人「また献金?…」
俺    「前に本人が言ってたけど、献金はしてたらしいよ。赤村プロの甘崎が、社長から聖水を勧められて困ってたから、神父と聖水ビジネスでも始めるのかもな。」

そんな邪推はしたくはないが、見た事もない人間を邪悪な存在と決めつけたり、軽々しくマリア様を語る、こういった怪しげな神父と宗教は信用しない。

俺    「俺から見れば、この神父の方が、よっぽど邪悪だよ。」
知人「じゃあ、赤村プロの人間は、その話を信じて、協会をも信じてるんですかね?」
俺    「いや、そこまで馬鹿じゃないよ。一部の人間が社長の手先であって、あとは烏合の衆。他人には全く興味が無いよ。ただ各スタジオに社長の内通者が居て、普通を装って暗躍してるよ。」
知人「怖いですね…」
そんな話で知人との会話は終わった。

あの男のそういった突拍子もない超常現象の話は、大昔から有名だったらしい。
元虫プロの仁偶さん(仮名)に出会った頃。俺が赤村プロ出身だと知ると、声をかけてきた。
仁偶さんは虫プロ時代に赤村プロの社長とは、同期の間柄だった。

仁偶「赤村君って大丈夫なの?」
俺   「大丈夫と言いますと?…」
仁偶「いや、あんな大事件を起こしちゃってるし、赤村君は虫プロに居た頃から、幻想的な話をよくしてたんだ。」
俺   「幻想?…」
仁偶「いやね、彼が言うには、中学時代の下校中に、山道を歩いてると、突然目の前に何メートルもある真っ黒い巨大な蝶がバタバタバタッて現れたって…そして家に着いたら、病気の母親が死んでたんだって真剣な顔で言ってたんだ。」
俺   「あっ、その話なら俺も聞きました。」
仁偶「ああそう…それならいいんだけど、あの大事件だってキッカケは、被害者に邪悪な狐が憑いてるって事で、集団リンチしたんだって?」

仁偶さんは知っていた。
新聞報道や週刊誌報道では、周りが闇を隠し続けたから、真実は報じられなかったが、一部の人間の間では知られていた。
仁偶「だから、あの大事件の原因も突拍子もない話だし、俺には彼の幻想としか思えないんだよ。」
俺   「真実は別として、あの人だけには見えるんでしょうね…」
俺が葦プロに居た頃、仁偶さんとそんな話をした事を覚えてる。

今回知らせてくれた知人にしろ、「あの人、大丈夫?」という言葉は、今でも様々な人から耳に入ってくる。
聞きたくもないけど、入ってくるんじゃしょうがないが…
おそらく今でも様々な幻想に取り憑かれ、善悪もわからず、本人だけが正義だと信じて生きてるのだろう。
自分は親族に命を狙われている、スタジオに巨大地震が発生している、などなど、その度に警察が動く…
その幻想で、周りに迷惑をかけたり、また大事件でも起こさなければいいのだが…

日常生活をしながら、独自の狂気の世界で生きられるということは、確かに普通の人と違う才能だろうが、誰もそんな才能はいらない。
今でも赤村プロでは、奴隷状態の甘崎が数々の強烈なパワハラを受け、困り果てていることだろう…
もしも神が存在するなら、赤村プロの数多くの被害者逹と甘崎の安堵、そしてあの男とその協力者の裁きを願いたいものだ。
アーメン。