ろくでもない俺

                                                                                                           2015/02/21





南が明日新婚旅行でニューカレドニアに出発する。

ところが、制作の人間に「会社に自転車は置いて出発してくれ。」と頼まれた。
つまり南の自転車が会社に無いと、南の休暇が社長にバレるという事だ。

この会社はどこかおかしい。従業員の一生に一度の「新婚旅行」ですら、堂々と行けないのだ。
南はこのスタジオの功労者。バレようがバレまいが堂々と行って来いと言ってある。
南は雑草プロの功労者だが、そんな南に対して会社からは、結婚のお祝いどころか、「お祝いの言葉」さえ一切無い。それは誰に対してもそうだ。

現場の人間と会社の関係は「大家」と「店子」の関係。会社は口は出すけど何もしない。
こういった社風だと決して「会社に愛着」などは生まれない。そして永遠に発展も無い。
だからここを組織としてまとめるのにいつも苦労している。ここに居る以上、会社が発展する事を望んでいる。だが会社は協力どころか、時々後ろから矢を放ってくる。

それならばせめて中に居るアニメーターが独立して、食えるアニメーターになってくれればと思ってる。そうは言っても、それがまた難しい。ここは他社では雇わない人間が多い。でないと五割以上天引きする会社などには来ない。
毎年何とかモノになるのは一人ぐらい。

技術が劣るだけならまだいい。頭の中身と心の中身まで劣る。そんな人間の出入りが激しい。
音符が読めないのに作曲家になりたい、体重が100キロあるのにアイドルになりたいといった、無謀な輩が多いのだ。絵を描いた事など無い人間まで入って来る。(ホントだぜ)
新人のくせにプライドだけが高く、俺のリテークに腹を立てて、飛び出して辞めて行った奴も何人かいた。

以前社長と喧嘩した時に社長が言った。
社長「運命ってものはな、俺やお前のように、ろくでもない人間がやってる会社には、ろくでもない人間しか来っこないんだ!」
おそらくそれが社長の本音だろう。そしてそれは事実だろう。だから「ろくな奴は来ない」
社長のそんな開き直った正直な本音は清々しさを感じる。でもそれが運命なら変えるつもり。

確かに俺も、ろくでもない人間だ。そんな自覚はある。
だが、ここに来る人間はろくでもない人間のくせに、その「ろくでもない人間」だという自覚が無いから困る。
仕事も出来ない、社会性も無い、信念も無い、一生懸命する事も無い。何も無い…
中身が何も無いくせに心の片隅で、みみっちい何かを頑なに護ってる。

ろくでもない人間が、それを認めた時こそ新たなスタートが出来る。そして見栄もプライドも消えた時こそ強くなれる。
さあみんな、俺と一緒にろくでもない人間だと認めて頑張ろうぜ。
ろくでもない人間はこれ以上墜ちる事はないんだしな。上がり続けるだけ。

「南、新婚旅行、行ってらっしゃあ~い。」
HPの管理人の南が帰って来ないとメカ音痴の俺じゃ更新が出来ない。
「みやげ話楽しみにしてるぜぇ~♪」