文化庁の大嘘

                                                                                                           2015/05/01





文化庁がアニメーターに関するデータを発表した。
だが、そのデータは正確さが全く欠けているデータだった。
TBSラジオの報道によれば、「アニメーターの平均年収」が332、8万円と報道した。それは絶対に有り得ない数字だ。ここに数字のマジックがある。

よく調べてみると、これらはプロデューサーなどアニメの仕事全てに関わる人達の平均年収であって、アニメーターという職種の平均的年収ではない。また、それには印税や著作権まで含まれいる。これでは「アニメーター」という限定の調査をうたっていながら、全く正確性を欠くデータだ。ましてアニメーターは印税や著作権は無い。アニメーターだけに絞れば、おそらく年収は200万円を下回るだろう。

このデータは文化庁が外部団体に委託して調査したらしいが、このデータは、大手のアニメ会社や「潤っている会社だけ」のデータであろう。
そもそも、こういったアンケートに「答えられる会社」は、殆どが「勝ち組」か大手の専属会社だろう。

こういった調査は、数年前にも下請けの会社が、元請け会社から過酷な扱いを受けていないかという調査があった。だがこれに対して、報復を恐れて調査に応じなかった下請け会社も多々あった。
ラジオのインタビューを受けていた人間も「勝ち組」だ。「上手くなれば稼げる夢のある職業だ」と答えてる。(ご立派)それは確かに一理あるが、このアンケートは実態を調査するわけだから、「夢」を語られても違和感があるしズレもある。

実は雑草プロも経営者の判断でアンケートには答えていない。また俺の知り合いのいくつかの下請け会社も、提出を見送っている。
つまり、このデータは国がよくやる民間の「一流企業」の平均月収を基本にして、役人の給料を決めるデータみたいなものだ。したがって、この調査は数字のマジックであって、「アニメーター」の実態をうまくごまかしている。
そもそも下請け会社に所属している多くのアニメーターは、こういったアンケートが会社に届いてること自体知らされていない。仮に知らされて正直に答えたとしても、今回のようにそれが正しく発表されるかさえ疑問だ。
アニメーターの年収に限って言えば、いっそのこと「国税庁」が調査した方が正確なデータは出る。

今のアニメ界は原画も動画も「対価に合わない仕事」をしているのは明白だ。
特に動画に関して言えば、アニメを作るうえで一番過酷な分野だろう。
低賃金で過酷な作業を強いられてるのが現状だ。そんなわけだから、金銭面も含めそれに耐えられなくなった多くの若者達が、志半ば泣く泣く転職していく悪循環になっている。 動画という作業を上手い人間が描けばスラスラ描けて稼げるかと言えば、そうではない。収入的にも落ちるし、作業自体が対価を度外視したシステムになっている。

もし作画監督クラスの上手い人間が動画を作業したとしても、収入は低賃金になる事は確実なのだ。
つまり動画という作業自体が「丁稚奉公」的なシステムなのだ。
確かに「上手くなれば稼げる」という論理も良くわかる。だが「動画というシステム」自体が職業として成立しにくいし、野球で言えば玉拾いに近い。言葉は悪いが、玉拾いをしながら野球を学ぶようなものなのだ。

そんな下積みで勉強になるのならまだいい。しかし中には「えっ! こんな絵を動かすの!?」と驚くような無謀な作業も多い。そういった作業はただただ苦痛を伴うだけで何の勉強にもならない。時間と疲労だけが蓄積されていく。そしてその対価は子供の小遣いにさえならない。

そういったシステムは、動画を描く人間はまだアニメーターとして「発展途上」の人間なのだから、割の合わない仕事をさせても仕方ないといった考えが根っこにはある。
そして動画の単価システムは、一人の人間を描いても、百人の人間を描いても同じ報酬なのだ。(原画の場合も同じ)そういった金にもならない大変な仕事は必ず下請けに回ってくる割合が多い。(もしくは海外)

ある会社の社長が「最近の若者は汚い仕事を嫌がる。」と言って物議を呼んだが、まさにそれに近い。「汚い仕事」がある自体が問題なのだ。企業がその箇所を修正すればいいだけの話だ。まさしく動画という分野は人道的にも「グレーゾーン」の問題がある分野なのだ。
雑草プロで教えてる立場として言えば、せめて「食う」という最低限の事だけでも満足になればと、いつも思ってる。

TBSラジオの元新聞記者だったコメンテーターが言った。「アニメーターの残業なんて、こんなもの大した事ないですよ。私なんか記者時代に朝駆け、夜駆けしてもっと大変でしたよ。」
実態も知らず、「給料」で護られた人間だけが言える言葉だ。

「マスコミ」なんてこんなもの。弱者の味方のフリをして、心はいつも上から目線。
そんな下請けの実態は文化庁の調査なんかより、このHPの方がよっぽどわかりやすい。
「文句があるならやるな。」という殿様商売の論理だけでは、何の未来も解決にもならない。

そんなわけだから、今は才能ある若者でもアニメ界に絶望し、ゲーム業界に流れて行く若者達が多い。
年金も健康保険も払えず、夢だけを追い求め、足掻いてる若者達が殆どだ。

繰り返すが、最後に文化庁発表の「アニメーターの平均年収」が332、8万円という数字は完全なる「まやかし」だという事を言っておきたい。
俺に真面目な話は似合わないか…(^^ゞ