スローカーブを投げよう

                                                                                                           2015/05/07





俺は直球しか投げられないから、誤解も多い。HPのタイトルからして「アニメボム」だから言葉もキツい。たまにはスローカーブを投げてみよう。

前回の文化庁発表の調査に対して、俺が敏感に反応したのは、例えその調査が優れた調査だったとしても、一番重要な部分をボカしてしまったら、その調査の信憑性が揺らいでしまう。

これからアニメを目指す若者も、その親御さんもごく普通の「一般人」だ。
その仕事で一番重要な部分である「収入」をグレーゾーンにしてしまうと、これからアニメーターを目指す若者と、それに協力しようとする「一般の親御さん」に誤解を与えかねないからだ。

教えてる立場として、そういった親子間の金銭を巡る軋轢を何度となく見てきた。
今のアニメ界のアニメーターで、年収が300万円を超えるアニメーターは「一流の部類」と言ってもいいだろう。
その一流の部類のアニメーターですら、必死で長時間作業してその額を稼いでいる。出来高制のアニメーターは、もちろんボーナスなども無い。

一般の親御さんにとって、アニメーターという仕事の厳しさと過酷さはあまり理解出来ないようなのだ。長時間働いてるわりに低賃金。
「何でお前はいつまでたっても稼げないんだ!」と親子間の軋轢が生じるのは毎度の事。生活費の援助のほか、健康保険や年金、奨学金まで親が払うハメになる。
アニメーターという職業は、天才でもない限り1、2年は援助が無いと生活出来ない世界なのだ。

それを一番最初にもってこないと、変な誤解を生む。
確かに上手ければ稼げるのだが、その額も限度がある。作画監督クラスに成れれば、一般のホワイトカラーのサラリーマンぐらいの年収は可能だが、その倍率は高い。
どれぐらい高いかと言うと、他業種に例えれば、百貨店の支店長に成るぐらいの倍率だろう。そしてそこまで達成出来たしても、生涯賃金はやっと一般のサラリーマンの生涯賃金ぐらいの総収入ぐらいだろう。もちろん退職金なども無い。それが現実なのだ。

アニメーターは決して儲かる職業ではない。多くのアニメーター達と腕を競って、のし上がって作品のトップに立ったとしても、一般のサラリーマンの生涯賃金ぐらいしか稼げないのだ。

これを読んでる親御さん、これが今のアニメーターの現実です。
そして国が日本のアニメを文化だと「言うのならば」海外出しの仕事に対して関税をかけて、国内のアニメーターを育てないと、才能のある若者も育たない。そしてやがてこの文化は海外にとって代わるかもしれない。

アニメ界の底辺で、アニメーターの卵達と同じ空間に居る俺は、その痛さは良くわかっている。
スローカーブを投げようと思ってても、ついつい熱くなってしまう…

アニメーターは金は無いけど、精神だけは鍛えられる職業かもしれない。