自分勝手なサイコパス

                                                                                                           2015/03/03





「なぁ、体調も悪そうだし、2、3日自宅作業したらどうだ? 」
激しい咳をしている女子に声をかけた。周りは感染したら大変だと戦々恐々している。

女子「大丈夫です。咳が出るだけで私は大丈夫ですから。」

俺「じゃあ遅刻してもいいから、一回病院で見てもらってきなよ。」

女子「いいえ、大丈夫です。病院に行くほどではありません。」そう言って頑として譲らない。

俺「みんな心配してるし、自宅作業して万全の体調で仕事しなよ。」

女子「本当に大丈夫ですし、自宅作業だとダラけてしまって、私は上がりが悪くなるんです。」

(…そんなこと、知ったことか! コイツは自分の事しか考えてない…)
その後もやんわりと注意してみたが、頑として譲らない。

みんなにもし感染したらマズイなぁ…そう思いながら自宅に帰って、今度はメールで病院に行くか、自宅作業をするかをうながしてみた。
だが返ってきたメールは、「家だと私の作業が遅くなる」の内容に俺はついにキレた!!
「お前は自分の事しか考えられないのか!!周りがどれだけ戦々恐々してるのかわかってるのか!!」そんな怒号のメールと、他の人間から寄せられた苦情メールも添えて送り付けてやった。

結果、翌日は自宅作業することになったのだが、ここまで激しく言わないと他人の心がわからない…

この女子、全てにおいて自分一人が良ければ周りのことなど一切考えない。
ダメなアニメーターと言うよりも、人間としての感性が抜け落ちているのだ。
自分に都合のいい人間とだけは絡み、自分の得にならない人間とは一切口もきかない。それは徹底している。
対人関係においても他人は単なる「駒」のひとつ。協調性が皆無で、都合の悪い事は「我関せず」で通して貝になる。そしてどうしようもなくなった時だけ口を開く。

一番怖いのは、自分が得するなら、仲間を平気で裏切り、それまで敵だった人間とですら手を握る。大問題が発生して、助けてやっても、かばってやっても最後は自分の「得の為」なら平気で人を裏切る。そんな煮え湯を何度も飲まされた。
そんな醜い性格を「おとなしい」という鎧で隠してる。

だが俺はハッキリ本人には言う。わかろうが、わかるまいが、不愉快な気持ちだけはハッキリ本人には伝える。耐えていたら俺こそサイコパスになってしまう。

ダメなアニメーターには感情を持って接してはいけない。
機械のようにやる事だけをインプットして起動させればいい。
ヘタに気を使ったり情けをかけると、故障したり爆発を引き起こす。
機械にとっての感情は水であり、その水を浴びればショートしてしまうのだ。
一番長持ちさせるには、感情を排して放っておくに限る。これがダメアニメーターの正しい使い方だ。

本当はそんな事はしたくない。少しでもいい所を見つけ出して、機械じゃない関係を築きたい。そう思っても相手に普通の感情が無ければ、そうせざる得ない。
プライドが高く我が強いくせに、おとなしい猫を被った人間ほど、卑しい本能を隠し持っている。そしてその卑しい本能を卑しいとも思わずに生きている。
だが周りに迷惑が及ぶなら、俺は黙っていない。ここにはそんな仕事とは関係ない戦いもある。

感情を排し、無表情で能面のような顔をしたアニメーター…その心の奥底に潜むドス黒いナルシズムは、手を差し伸べれば思わぬ「しっぺ返し」をくらう。
ここに来る若者は対人関係を嫌う。最近の若者がそうなのか、最近のアニメーターがそうなのか、俺にはまだ判断出来ない。

俺の話を聞いたある友人が言った。
「完全なるサイコパスですね…」

そう、こんな人生経験なかなか出来るもんじゃない。精神的に鍛えられてると思って、半分は楽しんでる。
それでも、たまには心落ち着いて眠りたい夜もある。