史上最強の軍団

                                                                                                           2015/04/13





最強の軍団とは、今年雑草プロに入って来た新人達のことだ。
最強と言っても、「レベルと精神の低さ」がだ…

殆どの人間がトレス経験が無い。もちろんタイムシートもわからない。何もわからない…
何人かはアニメ学校でトレス経験があるが、アニメ学校に行ってない人間の方がまだマシなのだ…

新人男「僕はアニメ学校で、歩きや走りの基本パターンは一通りやってきましたし、原画も描きました。」と、自信満々に自慢する。
冗談じゃない!!
見たら、歩きは「欽ちゃん走り」、トレスは小学生の「写し絵」…
俺の四十年間のアニメ人生の中でも、これほど最強の酷さの新人達は出会った事がない。

特にアニメ学校出身者の方が精神、画力とも呆れるほど「醜い」。とんでもない絵を描くくせにプライドだけは非常に高い。
だから言ってやった。「君らの学んできた事は一切何の役にも立ってないよ。」
今年入ったアニメ学校の出身者を「100メートル走の選手」に例えると、確かに知識はある。スターティングブロックの使い方は知ってるし、スパイクも良い物を選んでる。
ところが、肝心の足が「素人より遅い」…

「俺はトレス練習するレベルではない」とばかり、陰でトレス練習の不満を言ってるらしい。
「何故、中割りさせてくれないんだ。」
そこで中割りさせてみたら、キャラが変わるどころか「絵の冒涜!!」
例えば、原画が女優の「松たか子」の絵だとすると、中割りの絵は「腐乱死体の顔」(本当なのだ!)
自分の絵の良し悪しさえわからない…そんな人間が何人も居るのだ…

冗談じゃない、こういった連中をどうしろって言うんだ…
アニメ学校出身じゃない人間もスキルが低く、まるで遊び感覚の体験入社じゃないかと疑うほど。そんなわけだから、練習さえ身が入らない。あまりのていたらくぶりに、俺は本音をぶちまけた。

「プロ野球の選手で、甲子園で活躍した選手ですら、何ヶ月もキャンプを張って、基礎体力作ったり、フォーム修正してたりして練習してるんだ。そしてふるいにかけられて、やっと一軍の試合に出られる。
ましてドラフトにも引っかからない君らが、数日で試合に出られるはずもない。君らは選ばれた人間じゃない。ここは誰でも入れる会社だ。レベルの低い人間がまともに練習しないでどうする? 俺はハッキリ言うけど、今年の新人は、俺の四十年間のキャリアで一番レベルが低い。もっと自分のレベルをわきまえてくれ。
上手い人間は君らよりもっともっと努力してる。やる気の無い人間は、もう辞めていいから退社願いを申し出るように。」
わかろうが、わかるまいが俺は言いたいことは言う。

そんな駄目新人の中にも、それでも絵がまだまともに描ける女の子が一人だけいた。
ところが、その娘は大の人間嫌い。まるでゾンビのようで、誰とも話さない。身体から「近づくな」とバリアーを張っている。
先輩が少しでもコミュニケーションを図ろうとしても拒絶する。
冗談でも言おうものなら、不愉快そうな真顔で「何か…」と返される。人とのコミュニケーションが全く図れないのだ…
社内ではもっぱら「あの娘に関わるとヤケドする」と噂にまでなっている。

例え変人でも多少絵が描けるので、俺も南も何とかしてやろうと親身になって面倒を見ていた。
俺「何か困った事があったら、俺か南に言ってくれればいいから。」
ところが、親身になっても毎回不快なヤケドの連続…

そして彼女には絵に関して、大きな欠点があった。
そこで苦手な箇所の練習を指示し、それを見てやろうとすると、「嫌です。」と言う言葉が返って来る。
俺「そんなこと言うなよ、苦手な所は練習して上手くならなきゃ駄目だ。俺が見てやるよ。」
ゾンビ女「嫌です。」(キッパリと)
俺「そんなこと言われたら、教えることも出来なくなるよ。」
ゾンビ女、不愉快そうな顔で、「じゃあ、気が向いたら…」
「気が向いたら…???…」その言葉に驚いた。

駄目だ、この女、どこかイカレてる…まともじゃない…何様だと思ってるんだ…
俺がこんな素人に「上から目線」で言われる覚えはない。そんな人間を相手にしちゃいけない。俺はそこまでお人好しじゃない。
平静を装いながら「ああ、そう、じゃあ頑張りなよ。」と言ったものの、心の中ではこの女を完全に見捨てていた。
すぐさま南を呼んで南の担当を外した。馬鹿を南が面倒を見る事もない。そして席も見えない位置に移動させた。後は自力で這い上がってくるしかない。

俺は精神科の医者じゃない。人間の感情を持ち合わせてない人間の相手するほど暇じゃない。今年はプライドも高く、人間社会に溶け込めないそういった人間が「何人も」いるのだ。
これでは、まるで泥の中から砂金を探すような作業…
今年はそんな史上最強の低レベル軍団。怖いもの見たさの同業者の皆様に披露したいぐらいだ。あの有名な「プライドのレジェンド」の方がまだマシだったのだ。

そんな訳だから、今年から雑草プロの全てのイベントを廃止にした。レギュラー陣には申し訳ないが、こんな連中と一緒にコミュニケーションを取るぐらいなら廃止の方がよっぽど平和。

南「何でここはそんな人間しか入って来ないのかなぁ?…」
俺「人間嫌いの人間がアニメーターになる割合が多いんだ。他の会社はそれをふるいにかけるからいいけど、ふるいにかけられた人間がここに集まる。」
南「面接担当の●●さんも困ってる…」
俺「俺にもこぼしてたよ、贅沢言ってたら誰も入って来ないって。」

それでも、まだ発展途上でヘタだけど、プライドも無くまじめに取り組んでる人間が何人かいる。
そういった連中だけでも面倒見ようと思ってる。
大変かって?
いや、反対に楽な連中さ。「本気」になる必要も無いし、相手にならない。こういった連中は、自分自身で自覚するしか救いようがない。

邪魔されないように粛々と仕事するだけ。去年の駄目新人達が、今まさに輝いて見える。 そんな幻想に惑わされないように注意しよう。