地獄のマリオネット

                                                                                                           2015/06/22





原画清書が全く使えない…
そこで先輩方が原画清書をしてあげて、中割り作業をさせる。
だが何度言っても同じミスを繰り返す…理解力が乏しいのだ…
仕方ないから、今度は先輩方が中割り作業を全部やり直して、それの清書をやらせる。
しかし、その清書は「8割方」使えない…そこで8割の絵を消して直すか、全部やり直してやっと完成…

今年の新人はそれぐらい使えない…
そして超遅い…使えないのに超遅い…まるでアニメの牛歩戦術…
先輩方が30分で終わる仕事を10時間ぐらいかける。
出来上がってもそれも直しまくらないと使えない…

ここは曲がりなりにもプロ。新人達をサッカーチームに例えるなら、70歳ぐらいのチームだ。とにかく走れない…
走るどころか、ルールさえよくわかってない。
それでも試合をしなくちゃならない。

雑草プロの新人達をサッカーの試合に例えてみよう。
試合開始のホイッスルと同時に先輩達は、新人をおぶって走り出す。

…おっ、重い…

そのフォーメーションは、先輩が新人をおぶったまま走り回るのだ。そして新人の位置取りを決める。
ディフェンスの位置が決まったら、その場所へ新人を置く。
「いいな、動くんじゃないぞ、そこに立ってればいいんだ。」
ディフェンスの新人の役目はピッチ上の障害物。ボールがぶつかってくれれば儲けもの。
ルールがわからないから、放し飼いにしておくとオウンゴールを決められてしまう…
「いいな、ボールが来ても動くな!」そう念を押して自分の位置へ。

一方、攻撃陣はもっと大変だ。先輩は新人を背負ったまま敵陣深くまで移動して行く。その走りは悲惨だ。汗だくで走っている。
苦しかろうが辛かろうが、それでも試合は始まってるのだ。中にはユニフォームを前後反対に着ている新人もいる…

そんな最中チャンスボールが来た!
先輩はすかさず新人を背中から下ろし、目の前にボールを優しく置いてやる。
すぐさま新人の足を両手で抱え上げる。
「いいか、よけいな力をかけるなよ、変な所にボールが飛んでっちゃうからな、力加減は俺に任せろ、お前は立ってるだけでいいんだ!」そう諭しながら、抱えた新人の足をボールに当ててやる。

シュート!!
ヨレヨレのシュートだったが、敵のゴールキーパーが足を滑らせて転んだ!

「ゴッ、ゴオ~ルッ!!」

「やったな新人、一切よけいな事をしなかったおかげだ。」

こうして自分の力を殆ど使わない効率的なサッカーをする新人達…
…今年はこんな新人が多い…

その作業体制をもっとわかり易く言えば「二人羽織り」だ。
新人の背後に回って、新人の袖口から手を出して絵を描く。
「動くなよ、動くと描き辛い、あっ、もっと首を右に寄せて。」
おんぶにだっこの新人達…

そんな新人達に対して、最近は怒る事も無い。
怒っても出来ないんだから仕方ない。そもそも怒るレベルではないのだ。
二人羽織り状態の仕事で、悔しくないのか? 情けなくないのか? それでも楽しいのか?…その感情さえ表に出さない最近の若いダメなアニメーター逹…(いや、モドキだ)
「アニメを描いてる」という事だけで満足してしまっている。上達は二の次なのだ。絵がヘタだろうが、例え「マリオネット」だろうが、自己陶酔しているのだろう。

作業のカット意外はバリアーを張り、先輩方に聞きに行く事すら無い…
まるで流れ作業のような仕事ぶりだ。
それでもいつか奇跡が起きて、戦力になってくれればと微かに思っている自分が少し情けない…。

それでも雑草プロは「プロ」だ。モドキ相手でも最低限の仕事はしなくちゃならない。
今日も日曜出勤。いや、時計を見ればもう月曜だ。

発展途上の新人から、忙しさ貰って未だ俺は元気なのかもしれない。