チンピラ

                                                                                                           2018/01/25





あの危険なアニメ会社を辞めてから9ヵ月。心を揺さぶるような刺激的な事は少なくなった。
だがまだまだ油断は出来ない。あのアニメ会社は未だ存続して活動している。俺があの会社にインプットされてる以上、災難が消える事は永遠に無い。過去の経験上、いつ何時攻撃対象になるかわからない。
未だ社長に絶対服従する人間も居るし、協力関係のアニメ会社もある。
不穏な噂も絶えず、相変わらず人の出入りは激しいようだ。今月もまた退社する人間がいる。

相棒の南は万全の安全対策として、先月引っ越した。あの会社から徒歩数分の距離だと不安もある。
その南の近所に住む、あの会社のOBのMとNも近々引っ越す予定だ。

古くからあの近辺に住む住人は、数々起こる事件に多少は後ろめたさを感じているようだ。
昨年あの会社を辞めた当時、ある居酒屋で酒を飲んでた時、たまたまあの会社にまつわる話をしていた。
すると突然、「そんな話は聞きたくねぇ!」と怒鳴られた。
声がした方を見ると、近くで酒を飲んでる70歳は過ぎた老人だった。
どうやら俺の話が耳に入ったらしく、かなりの剣幕だった。
地元の住民だったらしく、過去の数々の忌まわしい事件の事も知っていた。
突然怒鳴られた俺と、多少言い合いになったが、ヨレヨレの老人と喧嘩しても意味はない。店に迷惑をかけてしまうので、俺は店を出た。
去年はこんな事が二度あった。地元の人間には思い出したくない過去なのだろう。

時々は用事であの近辺に行く事があるが、最近は何故かよくチンピラに絡まれる。
道路で二度、本屋ではあきらかにわざと相手がぶつかってきてインネンをふっかけてきた。
今日も100円ショップで、すれ違いざまにかすかに服が触れた程度で、20代のチンピラが凄んできた。

チンピラ「俺に触れんじゃねえよ!」と近づいて来た。
俺「ここは狭いんだから、少しぐらい触れるだろ。」
チンピラ「そんなの関係ねえ!」
俺「なぁ、くだらない事で揉めるのは止めようや。」
チンピラ「うるせえ!テメエは臭えんだよ。」もはや単なるインネンだ。
俺「オメエも臭えよ。」俺はこういった社会のゴミは大嫌いだ。

しばらく睨み合い…

チンピラ「組事務所に連れて行ってやろうか。」
俺「だから何だ?」
チンピラ「組事務所に連れて行ってやろうかって言ってんだよ!」

弱いチンピラのクソ戯れ言。コイツは一人じゃケンカも出来ない、コケ脅しの糞野郎だ。
だから言ってやった。俺「なんだ?、オメエは一人じゃ何もできねえのか?」
続けて俺はもの静かに言った。「やるんならやってやるよ。」

しばらく睨み合いのあと、チンピラは去って行った。
紳士には紳士の対応、チンピラにはチンピラの対応。それが俺の流儀。

そして店内で買い物を続けてると、再びチンピラが現れてインネンをつけてきた。
その空気に店員が慌てて、「大丈夫ですか?」と止めに来た。
俺「大丈夫です。くだらない事は止めようって言ってるのに、クドクド言ってくるから…」
そしてチンピラは苦虫をかみ殺したような顔でその場から去って行った。

馬鹿馬鹿しい出来事だったが、こんな事も周り巡ってやって来る。
俺も大昔に「誰かさん」の命令で、こんな事をやったのも事実だったから…
度々起こるチンケなインネン連鎖は、あの会社と関係あるかどうかはわからないが、100%否定は出来ない。そういった手下が男女問わず何人も居たのは事実だ。
自宅へのデモ、イタズラ電話、住居破損などなどキリがない。
以前は誰の仕業か、自宅の俺の自転車の真下に、大きな猫の死骸が置かれていた不可解な出来があった。
区役所に連絡して処理してもらったが、みみっちい変な事はよく起こる。

今は防犯カメラが普及して、犯罪もしにくくなってるだろうから、アソコも充分警戒はしてるだろう。

ちなみに南も新しい場所に引っ越して、広くなり元気に子育てを楽しんでいる。

南「柳田さんの住みたい街ってある?」
俺「特に無いな。」
南「しいてあげるならどこ?」
俺「外国と豊島区の長崎以外ならどこでもいいよ。」
南「愚問でした…」