新しい命

                                                                                                           2020/11/28





11月初旬、南に二人めの子供が誕生した。今度は男の子だった。
入院中はコロナの影響で、親族も面会できなかった。
南の入院中は4歳になる長女のなつくちゃんは、メソメソしていたが、今は元気いっぱい。弟を抱っこしたり、ミルクを飲ませたり、お姉ちゃんぶりを発揮している。
その微笑ましい姿を見ているだけで、こっちは癒やされる。
7人兄弟で末っ子だった俺としては、下に兄弟がいるのは羨ましいかぎりだ。

ちなみに南の父親であるあの巨匠も駆けつけて大喜び。
その巨匠と雑談していた時、巨匠がひょんな事を言い出した。
巨匠「私もブームに乗り遅れないように、鬼滅の刀を借りてきて見たんですよ。そうしたらテロップに赤村プロが載ってましたよ。」
俺「そうですか…」…聴きたくない話だ…忌まわしい思いだけが脳裏を駆け巡る…
テキトーに言葉を濁して、その話から逃れた。

アニメーターでありながら、アニメをあまり見ない俺としては初耳だった。
業界一悪名高い赤村プロでも、まだ仕事の需要はあるようだ。
トップページでおわかりだろうが、例え犯罪者だろうが、ブラック企業だろうと、低賃金で仕事をしてくれれば利用するのがこの業界の常。
いや、裏にはもっともっと深い闇がある。他の人間まで傷つけるから止めとこう。

さて話は変わって、交通事故にあった妻は退院して、現在は後遺症もなく元気に暮らしている。
事故直後は車のフロントガラスに、妻の髪の毛が付着して、声も出せなかったらしい。警察の話によると、かなりの重傷だと思ったらしい。
事故直後の妻は会話する事もできず、道路に横たわりながら、救急隊員に手で自宅の電話番号を教えたらしい。それすら妻は全く覚えていない。無意識の中でそうしたのだろう。
病院での精密検査の結果、体は内臓の損傷も無く、骨折も無かった。そして一番気がかりだった脳の損傷も無かった。そして事故のショックで話せなかった言葉も完全に回復した。
打った場所が頭だっただけに、病院ではかなりの精密な検査をしたようだ。
それにしても、よくこの程度で収まったとつくづく思う。

妻が言うには、柳田家の摩訶不思議な力が働いたのかもしれないと言っている。
それは昔から柳田家には、命に関わる事柄だけは、何故か神憑り的な幸運がある。

俺の高校時代、俺の父が交通事故にあった。
父は神主で地鎮祭の帰り道に自転車で走行中に事故にあった。荷台には地鎮祭のお供え用に使った野菜を貰いって、野菜を荷台に積んでの帰り道だった。自転車で走行中に後ろから走って来たダンプカーに跳ねられたのだ。
父は空中高く舞い上がって、真っ逆さまに頭から道路に落ちていった。
ところが、頭が道路に叩きつけられる寸前、奇跡が起きた。自転車の荷台に積んであった、地鎮祭のお供え物のキャベツが、コロコロ転がって落下する父の頭の下でピタリと止まった。
そのキャベツが頭部の衝撃をやわらげて、父の頭を守ったのだ。そして父は骨折もなく、数日の入院で怪我は回復した。

また、長男は大学時代に兵庫県の明石城の石垣から落ちて、松ノ木に引っかかって助かっている。
その下の兄は、車で走行中に大型重機と正面衝突をして、車はペチャンコなのに骨折だけで済んでいる。

そんな俺も、何度か事故にあっている。最初は小学一年生の時だった。自転車に乗って塀のある角を曲がったら、前から走って来た原付バイクと正面衝突して、軽い打撲で済んでいる。
それと小学年二年生の時には、走行中の車から落ちたこともあった。
運転席の後ろで夢中で漫画雑誌を読んでいた。すると半分開いた窓から風が入ってきてページがめくれて読みづらい。そこで窓を閉めようと、漫画を読みながら車のドアの窓レバーに手を伸ばした。ところが、掴んだのがドアノブで、ドアを開けてしまった。(ロックをしてなかった)
車の動きは、ちょうどカーブで、そのまま遠心力で道路に投げ出されてしまった。
運良く対向車も無く、無事だったが全く怪我ひとつなかった。
当時はシートベルトの義務化も無く、殆どの人がシートベルトをしていない時代だった。

もっと不思議だったのは、中学時代に夜道の国道を歩いていたら、猛スピードで走って来た大型バイクに、背後から跳ねられた。そのまま畑に跳ばされたが、服が汚れただけで全くの無傷だった。
一方、相手のバイクはかなり損傷していたのに、こっちは全くの無傷。自分でも信じられなかった。
バイクの運転手は足を引きずりながら、「見えなかったんだよ…」と申し訳なさそうに近づいてきたが、怪我も無かったので、警察にも届けずそのまま自宅に歩いて帰った。
また、これは事故ではないが、俺がまだ幼児だった頃、母はガンで入院していたが完治している。

そんな柳田家の幸運を妻は知っている。だから今回の事故も、何かしら関係があると感じたのだろう。それが本当に今回の妻の事故と関連があるのかどうかはわからない。ただ柳田家には命に関わる事には、幸運が付いてまわるのは事実だ。ただ金だけは、全く恩恵に恵まれない。(^_^;)

少し前、葦プロ時代の友人のMさんが、(超有名なアニメ監督の元カノ)おっと、余計な情報だ(^_^;)、俺の父が神主だった事を知ると、急に驚いて慌てだした。
Mさん「ホントですか!!私は柳田さんと初めて会った時、柳田さんの頭の上にボ~ッと、何かが乗ってるように見えたんです…」
俺「んっ? 何それ?…」
Mさん「今までそんな変な事は言えないから、ずっと黙ってたんです。…あれは… きっと神主さんが被る烏帽子だったのかもしれませんねぇ…」と、真面目な顔で感心しきり。
それが事実かどうかは、俺にはわからない。柳田家の数々の幸運も含め、今回の交通事故で、もし妻に何かの御加護があったとしても、それは神や宗教とは全く関係ない事だと思ってる。

まだ解明されていない摩訶不思議な偶然や、魂的な世界だけはあるとは思ってる。
ただし、占いや手相に関しては、もはやギャグだと思ってる。それを自信満々に真剣に話す「超能力者」が日本には数多くいる。
中には殺されてしまった超有名な占い師もいた。占い師がよく使う言葉がひとつある。
「占い師は自分の運勢だけは、わからないんです。」

霊媒師に至っては、もっと凄い人もいる。
「わだすは、ぞうずわすんとんです。」(ジョージワシントン)
東北弁で元アメリカ大統領の霊を憑依させたお婆さんまでいた…
そんな能力を「信じるか信じないかは、あなた次第です!」

妻が交通事故にあってから、救急車のサイレンに少し敏感になった。またどこかで不幸が発生したのかと…
そう思ってたら、近所で元トキオの山口達也が、酒気帯び運転で交通事故。
娘が通ってた小学校の近くだ。時間帯の巡り合わせが悪かったら、小学生が巻き込まれてたのかもしれない…
他人の命を奪う事も無く、本人も無傷で済んだのだから、その「強運」に感謝して反省してもらいたい。

妻の交通事故でわかったが、交通事故の後処理は面倒くさい。実況検分や警察での調書。保険会社には事故証明の書類や、大量の書類を書かなければならない。それを送っても、書類不備を理由に相手方の保険会社から何度も戻ってくる。
病院の診断書を提出しても、保険会社の書類に担当医師に繊細に書いてもらわないと駄目だとか、書類によってはコピーは不可などなど、現在も全く進んでない。中には実印を押さなけりゃならない書類もある…
今や極力判子を省略しようとしている時代なのに、面倒だし指紋でいいのにと思ってしまう…
実印なんかあまり使わない。実印を作って使ったのは遠い昔の事。

実は…俺は「赤村プロ」の初代の発起人の一人だった。その時に実印を使った。
当時は軽い気持ちで、名前だけを貸しただけだが、今考えてみると、ゾッとする。
制作の甘崎みたいに、私的に散財した会社の赤字を押し付けられた可能性だってある。
ちなみに、あのリンチ事件の被害者のMさんも発起人の一人だった。
甘崎よ、国民保険ぐらいは入っておけよ。アイツは入ってないから、風邪ひいても病院にさえ行けない…
もしお前が事故にでもあったら、全額実費だぞ。

俺の嫁なんか、高度な精密検査を受けたから、全額実費なら、「400万円」と病院で言われた。たった一週間の入院でだ。
アニメーターの皆様、くれぐれも保険には入っておくように。そしてくれぐれも事故には御注意を。

先日、気休めにリサイクルショップでゲームを買って、暇つぶしにやってみた。
有名な野球漫画のチームを集めて対戦するゲームだった。
そのゲームの中のひとつに、知り合いの漫画家が原作の野球チームも含まれていた。
その漫画家は、あの「アニメーターリンチ事件」の加害者の一人…
妻が交通事故にあって、「実印」で赤村プロを思い出し、ゲームを買えばリンチ事件の加害者が出てくる…
「タモリ倶楽部」のオープニングのケツ振りダンスでさえ赤村プロを思い出す…(~_~;)
アニメと関係ないところで、あの会社が未だまとわりついてくる…(~_~;)

もうすぐクリスマス。南の娘のなつくちゃんへのプレゼントで、なつくちゃんの喜ぶ顔だけが今は楽しみ。

なつくちゃんの家来、柳田。