俺の癒やし

                                                                                                           2021/06/06





最近パッとした事もなく、憂鬱な毎日…

十七歳からアニメの仕事を始めて、今年からはナント! 年金を貰う歳になってしまった。ということは、もう四十八年もこの仕事をしている事になる。
今も地下でアニメの仕事を続けながら、全くアニメは見ない。だから今のアニメの情報は素人以下…

俺はアニメが嫌いなのだ。
長年嫌な裏側も見てきたし、ヤバいアニメ会社に居た時もある。そしてあまりにもいろいろ有りすぎた…
テレビ画面にアニメが映ると、すかさずチャンネルを代える。今や食アレルギーならぬアニメ・アレルギーなのだ。
この仕事を始めた当初の、十七歳の純粋な気持ちは、どこかに忘れてしまった…

最近は明るいニュースも無い…コロナ禍も含め、皇族の救いようのない問題…
道徳心さえ持ってない皇族なのだから、政治が腐敗しても当然のこと…
個人的にも反抗期の一人娘は家を出て、勝手気ままにやっている。そして、妻は体調が芳しくなく、家の中は暗い…

唯一の癒やしは、相棒の南の娘のなつくちゃん(仮名)と遊ぶこと。それと昨年の暮れに生まれた、弟の元気君(仮名)2人とも可愛くてたまらない。心が溶けそうになる。
現在の南は主婦業に専念して、二人の子供を育てている。

現在幼稚園に通うなつくちゃんは来年一年生になる。そして女の子だけど何故かウルトラマンが大好き。
物心が付いた頃は、アンパンマンが大好きで、その後はディズニーのプリンセス、そして今ではウルトラマンシリーズにハマってる。もちろん「ままごと」や「お人形遊び」など女の子の特有の遊びもするが、今は特にウルトラマンにハマってる。
なつくちゃんは、初代から現在に至るまでのウルトラマンをよく知っている。今や過去の映像は、DVDや衛星放送で見られるから、なつくちゃんはかなり詳しい。

初代のウルトラマンが放送されていた頃の俺は小学生。リアルタイムで夢中で見ていた。そんなわけで、俺は初代のウルトラマンとウルトラセブンだけは詳しい。その後のウルトラマンシリーズに関しては、チンプンカンプンで、なつくちゃんにいろいろ教えてもらっている。
なつくちゃん「ウルトラマンゼロは、ウルトラセブンの子供なんだよ。」
「それとね、タイガはタロウの子供なんだ。」
その好きさ加減は筋金入りだ。幼稚園の先生に「大きくなったら何になりたいですか?」と聞かれて、「はい、ウルトラの母です。」と答えたらしい。

なつくちゃんの家来の俺の使命は、ウルトラマングッズを買ってなつくちゃんに渡すこと。
過去におもちゃマニアだった俺のおもちゃ熱はハンパじゃなかった。ミニカーを始め、ラジコン、チョロQ、キャラクターグッズなど様々な物を集めていた。未組み立てのプラモデルは700個を超えていた。それも子供ができたと同時にそれを全部処分した。
こんなになつくちゃんがウルトラマンにハマるなら、レアなウルトラマングッズだけでも残しておけば良かったと、今更ながら悔やむ。

なつくちゃんのハマるウルトラマンは、その時々によって違うから、そのおもちゃを探すのにも苦労するのだ。タロウが好きだったり、ティガが好きになったりする。そうなると昔のおもちゃだから、市場には無い。元おもちゃマニアの血が騒ぎ、必死でネットで調べて購入する。

ところが、元マニアの本能で買い過ぎてしまい、南の怒りに触れてしまう…
南「置くとこが無くて邪魔になるんだけど…大きい物は誕生日かクリスマスだけにして。」
俺「いいじゃないか、なつくちゃんがウルトラマンを卒業したら、弟の元気君だってウルトラマンで遊ぶんだろうから。」
そんな言い訳しながら、なつくちゃんの笑顔見たさに、ついつい買い過ぎてしまう。

そんな、なつくちゃんが一番好きなのは「ウルトラマンゼロ」だ。…残念ながら、なつくちゃんのおじいちゃんが主題歌を作詞した「ウルトラマンガイア」はイマイチみたいだ。(~_~;)…おじいちゃんが、なつくちゃんの為にウルトラマンガイアをDVDにダビングしてくれたのだが、まだ見てないようだ。
日本の二大特撮番組、ウルトラマンシリーズと、仮面ライダーシリーズに関わったのは、俳優の「小林昭二」氏と、なつくちゃんのおじいちゃんぐらいかもしれない。(羨ましい)
なつくちゃんのおじいちゃんは「ウルトラマンガイア」と「仮面ライダーblack・RX」の主題歌を作詞している。なつくちゃんがもう少し大きくなったら、おじいちゃんの凄さが少しはわかるんだろうな。

そんな、なつくちゃんのウルトラマン好きに刺激されたのか、俺の童心を呼び起こしてしまった。
そして子供時代に好きだった「ウルトラセブン」にハマってしまった。
ネットで「ウルトラセブン」や「モロボシダン」のフィギュアを買い、先日はホーク一号のプラモデルを作ってみた。挙げ句の果てにウルトラ警備隊のピンズを服に付けている。
そのピンズを見たなつくちゃんが「ズル~い!」とオカンムリ。だが、ピンズには針が付いてて危ないから、なつくちゃんにはあげられない。

俺の娘はウルトラマンに全く興味がなかったから、ウルトラマンごっこはしなかった。
あまり興味の無い「ママごと」など、女の子の遊びが主流だった。
そんな訳で、なつくちゃんとのウルトラマンごっこは楽しい。もちろん俺は怪獣か悪者。
そしてウルトラマンのソフビを集めて、学校ごっこが始まる。
なつくちゃん「みんな並んで、先生の言うことを聞いて。」と、ウルトラマンのソフビ達が生徒になる。特に悪役のベリアルは悪い子のようだ。
時々赤ちゃんの弟の元気君に、お気に入りのソフビを舐められそうになって、いつも必死でそれを守ってる。「これなら舐めていいよ。」と代わりに渡すのは、いつも怪獣。

この二人を見ていると心が和らぐ。
俺は今まで200人以上のアニメーターを見てきたが、子供が苦手なアニメーターは数多い。およそ七割りぐらいがそうだった。
嫌いではないんだろうけど、どう接していいのか戸惑ってしまうのだ。話すことも出来ず、ただオロオロ…中には子供嫌いで、完全無視する人間もいる。と言うよりも、社交性があまり無い…

なつくちゃんとは血がつながってもいないのに、俺にとっては孫以上の存在なのだ。
そして、まだ6月なのに、すでにクリスマスプレゼントまで用意してある。(~_~;)…
前世で俺がなつくちゃんの家来だったという勝手な想像は、あながち間違いじゃない。

「おじちゃあ~ん!」と嬉しそうに叫びながら、走ってくるなつくちゃんの姿が、いつも目に浮かぶ。
弟の元気君が、もう少し大きくなったら、一緒に遊べることも楽しみにしている。

純粋な子供を見ていると心が洗われる。
そのうち、相手にもされなくなるんだろうから、今のうちにいっぱい遊んで癒やされよう。
なつくちゃんの親じゃないから、親バカじゃないけれど、「家来バカ」をやって元気を充電してもらってる。

                                
                                (俺のお姫様)