サンライズの罪

                                                                                                           2021/09/13





俺はアニメ界では全く影響力も無く、しがらみも無いから何でも正直に書ける。そして嘘が嫌いだから事実しか書かない。 ドンキホーテ柳田と名乗ってるのは、マヌケなほど馬鹿正直だからだ。

「ガンダム」で有名なサンライズスタジオと、赤村プロとの蜜月関係はヤバいほど深い。今回も俺の体験談だ。

あの日本中を震撼させ、新聞の社会面のトップを飾った事件の後も、赤村プロの体質は一向に変わらず、数多くの事件を起こした。そして、ついには「ガンダム騒動」で、スタッフ全員が逃走して赤村プロは空っぽになった。
身から出たサビとはいえ、赤村プロは数々のトラブルで、他のアニメ会社からもそっぽを向かれ、倒産の危機にまで追い込まれていた。そんな状況を救ったのがサンライズスタジオだった。

しばらくして、「ガンダム騒動」が落ち着いた頃、赤村プロの実態を知らないアニメーター志望者が、少しずつ赤村プロに集まりだした。それと同時にサンライズは、赤村プロにアニメーターの人材補強をしていく。
サンライズにアニメーター志望の若者が来れば、サンライズは赤村プロを紹介してゆく。またサンライズのテストに合格した将来性のある若者には、サンライズが赤村プロ経由で、給与を出して人材を赤村プロに送り込んでいった。

その頃、アニメーターの間で、きな臭い噂が広まっていった。アニメーター志望の若者がサンライズに行くと、赤村プロに回されるという噂だった。そんな噂が流れても当初はデマだと思っていた。
当時は地元の警察でさえ「赤村プロには行ってはいけない!」と公言してはばからなかった。今なら「営業妨害」として問題になるのだろうが、警察の対応はひるまなかった。赤村プロを訪ねようとする若者を警官が追い帰していたのも事実。あのオウム真理教のように、赤村プロは警戒されていた。

オウムといえば、以前にサンライズ作品で スタッフが、番組内でサブリミナル効果を狙って「麻原彰晃」の写真を使って大問題になった。
当時のオウム真理教と赤村プロといえば、反社会的組織である。サンライズが警察から目を付けられたのは必然的だった。
そんな事から警察の勇み足を生んで、ある別の事件でサンライズ作品の演出家が「誤認逮捕」されるという悲劇があった。

そんな赤村プロの異常さを、サンライズが知らないはずはない。いくらなんでもそんな危険な会社に、サンライズが人材の派遣まではしないだろうとタカをくくっていた。ところが、その話は本当だった。
現在もその人材派遣のシステムが続いてるのかはわからない。だが俺が新人の指導者として赤村プロに戻った頃は、サンライズから回されてきたアニメーターが、何人かいたのは事実だ。そして自分はサンライズスタジオの一員だと誤解して仕事をしていた。

俺がそんな事実を知ったのは、社内のアニメーターが会社のグチをこぼしていた時だった。
俺「ここは下請けなんだから、贅沢は言えないよ。」俺のその言葉に、原画のキャリア三年の女子が急に慌てだした!
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってください!!こっ、ここは下請けなんですか?!」
俺「なんで???…そうだけど…」
新人「わっ、わたしは、ここはサンライズスタジオの一部だと聞かされてここに来たんですよ!!ここの社長からもそう聞かされました!」

その女子は焦って、何度も何度も、ここが下請けか否かを俺に確認してきた。
当時の俺は赤村プロに戻ったばかりで、社内の内情はよくわからなかった。その女子の慌てぶりに俺も焦った。何か裏があると察した俺は、話をウヤムヤにして終わらせた。

原画マン女子の話に驚いた俺は、赤村社長に直接確認した。するとサンライズの紹介や、給与をサンライズが肩代わりして入ってきた新人の話も認めた。
サンライズでもないのにそう思い込ませて雇う…これは一種の詐欺だと思ったが、それ以上の追求はしなかった。
赤村プロに在籍しながら、サンライズスタジオ経由で給与が支給されるアニメーターはまだいいが、ランク落ちのアニメーターは、赤村プロ独自の業界一安い低賃金で働いていた。それでも自分はサンライズスタジオの一員だと固く信じて。
彼らはサンライズスタジオのネームバリューだけを心の糧にして、業界一の低賃金でも我慢していたのだ。 俺に食い下がってきた原画の女子も、そんなランク落ちの一人だった。

時は赤村プロが「ケロロ軍曹」を作画していた頃だった。
アニメ界のモラルなんてこんなもの。昔は「秘書募集」の広告で女の子を集めて、仕上げの仕事をさせていたアニメ会社もあった。
そもそも赤村プロは、嘘っぱちの賃金でアニメーターを募集していたし、サンライズも過去には誤解を招く、モラルに反する事をしていた。

サンライズの前身の創映社時代の作品「ゼロテスター」では、メカデザインを「ジョンデドワ」とオープニングで表記した。
その「ジョンデドワ」なる人物は知る人ぞ知る、あの有名な「サンダーバード」のデザイナーと同姓同名だ。ゼロテスターでは、あたかもジョンデドワ氏がデザインしたような錯覚を起こさせる表記をしている。話の内容もサンダーバードに類似していたから、ジョンデドワ氏本人がデザインしたと思っていた関係者もいた。昔は今の中国のような「まやかし」がまかり通っていた。

またこんな話もある。
この頃、サンライズスタジオのあるプロデューサーが、赤村プロの噂話を「新潟のアニメファンクラブ」に流した。それが会社に発覚して、そのプロデューサーは懲罰として窓際に追いやられてしまった。
その結果に赤村兄弟の喜びようはなかった。自慢話としてしばらく語っていた。
一方、新潟のファンクラブも何かの圧力に屈して、一時期ネットでお詫びの文章を載せていたことがある。

しかしプロデューサーを更迭できる強い力ってなんだ?…
まさか、バンダイじゃないだろうな…

赤村プロに関わると、得たいの知れない大きな力が動く。もはやアニメーターの力ではどうしようもないのだ。俺のような馬鹿が、こうして事実を伝えて若者に警鐘を鳴らすしかないのだ。

話を戻そう。その後、騙されたと悟ったのか、その原画の女子は赤村プロを辞めて行った。
サンライズスタジオが、若者にどういった説明をして送り込んだかは、俺はわからない… だが、若者に勘違いをさせて送っていたなら、それは問題だ。中には俺が居ない間に洗脳され、犯罪に手を染めたアニメーターもいるわけだから、サンライズの道義的な責任は大きい。
それよりもサンライズが赤村プロの実態を知っていながら、赤村プロに人材を送っていた意図が全くもってわからない。それも、サンライズの大の功労者、ガンダムの生みの親、「富野さん」を敵対する会社にである。
俺が居ない間に赤村プロはサンライズのお陰だったのか、かなり繁栄していて、スタジオは三つに増えていた。

サンライズが赤村プロを特別扱いする話はまだある。
俺が新人の育成していた時、赤村プロで育った作画監督二人が、あまりの金銭的搾取に赤村プロを辞めると言い出した。本人達が言うには、賃金の70パーセントも会社にピンハネされるのが我慢ならないと。そしてその二人の作画監督は秘密裏にサンライズの制作サイドに相談して、サンライズの社内に入る話がまとまった。
ところが、それを知った赤村プロの社長がサンライズの会長に抗議した。すると二人の作画監督の移籍の話はあっという間に立ち消えになってしまった。路頭に迷った二人の作画監督は、赤村プロに散々の悪態と恨み節を残して去って行った…

これからアニメーターを目指す若者も多いと思うが、アニメ界にはそういった謎と「カラクリ」もある。大手の会社といえども充分注意をしよう。そして危険なアニメ会社に回されないように、しつこいぐらい話を聞くことだ。事が起こっても契約書が無い限り、結局は勘違いや個人のせいにされてしまうのだから。

サンライズスタジオと赤村プロとの蜜月関係は、サンライズスタジオの前身「創映社」時代から始まる。その創映社の発起人達と赤村社長は、倒産した虫プロ出身だった。当然仲間意識もあっただろう。(それだけではないだろうけど…)
創映社の立ち上げ当時の、赤村プロは、創映社の仕事をしていたが、その後に創映社を離れて東映の仕事がメインになる。
ところが、しばらくしてあの日本中を震撼させた事件を引き起こす。社長の出所後も辞めていった人間に対しての数々の嫌がらせ…自分の手は汚さず手下に実力行使をさせた。また赤村社長が、あるアニメ関係者に命を狙われていると、身内やスタッフを巻き込んでの大騒動…地獄のミーティングで、社内のアニメーターへの「悪魔払い」など、言い出したらキリがない。そして業界からも相手にされなくなって廃業の危機にまで陥った。

赤村プロのそんな時期に、手を差し伸べたのが、創映社から社名を変えたサンライズスタジオだったのは言うまでもない。
そして現在に至るまで、その蜜月関係は続いている。

サンライズは、百獣の王ライオンのように、アニメーターを強くする為に、あえて千尋の渓ならぬ、地獄の渓にアニメーターを突き落としたのだろうか?…這い上がって強くなれとでも…いかにアニメーターが使い捨てなのかがよくわかる。
人を紹介したり、送り込むなら、最後までその責任を取るのが道義だ。問題のある会社に入れたら入れたで、後は知らぬ存ぜぬではあまりにも無責任過ぎる。サンライズが人材を紹介したり、回す事がなければ、何人ものアニメーターが被害から救われた。
これが俺の言う「サンライズの罪」だ。結果的に赤村プロに加担したわけだから、全く罪が無いとは言えない。
一流企業としての体裁がない…「いのまたむつみボロクソ事件」もサンライズ作品だった…
常識では計り知れない赤村プロとサンライズの関係は、巷では一部の上層部と、決して表に出せない闇があると囁かれている…

赤村プロを辞めた今、俺は現在のサンライズが赤村プロにまだ人材を送っているかどうかはわからない。ただ今後も若者が騙されたり悲しい経験をしない為にも、アニメ界の歴史の一部として、これを伝えるのが俺の責任だ。
過去に赤村社長に洗脳され、刺客まがいの犯罪に手を染めた人間の一人として。

世の中には光の裏には闇もある。純粋にアニメーターを志す若者に害が及ばない事を願う。